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子なし・親なし・兄弟ありの場合の相続手続きとは?ケースや注意点を解説

相続は多くの人にとって避けられない問題です。特に子どもがおらず、親も既に亡くなっており、兄弟姉妹だけが残されている場合の相続は、一般的なケースとは異なる複雑さがあります。この記事では、子なし・親なし・兄弟ありの場合の相続手続きについて、具体的なケースや注意すべき点を詳しく解説します。

 

子なし・親なし・兄弟ありの場合の法定相続人

相続が発生した際、まず確認すべきは誰が法定相続人となるかです。子どもも親もいない場合、兄弟姉妹が相続人となりますが、この状況に至るまでの順序や具体的なケースについて見ていきましょう。

 

相続順位の基本

日本の民法では、相続順位が明確に定められています。最優先されるのは被相続人の子ども(直系卑属)です。子どもがいない場合、次に親(直系尊属)が相続人となります。そして、子どもも親もいない場合に初めて、兄弟姉妹が相続人として認められます。

 

ただし、配偶者がいる場合は、これらの相続人と同時に相続権を持つことになります。つまり、子なし・親なし・兄弟ありの状況では、兄弟姉妹が主要な法定相続人となるのです。

 

兄弟姉妹が相続人となるケース

兄弟姉妹が相続人となる典型的なケースとしては、独身で子どものいない人が亡くなり、両親も既に他界している場合が挙げられます。また、結婚していても子どもがなく、配偶者と兄弟姉妹が共同で相続人となるケースも考えられます。

 

さらに、兄弟姉妹の中に既に亡くなっている人がいる場合、その人の子ども(被相続人から見て甥や姪)が代わって相続人となる可能性もあります。これは代襲相続と呼ばれ、相続関係をより複雑にする要因の一つとなっています。

 

兄弟姉妹による相続の特徴と注意点

兄弟姉妹が主な相続人となる場合、いくつかの特徴や注意すべき点があります。相続分の計算方法、代襲相続の仕組み、さらに半血兄弟の場合の特殊な規定など、重要な事項について詳しく見ていきましょう。

 

相続分の計算方法

兄弟姉妹のみで相続する場合、原則として相続財産は均等に分配されます。例えば、兄弟姉妹が4人いる場合、各人が4分の1ずつ相続することになります。しかし、配偶者がいる場合は様相が変わります。

 

この場合、配偶者が全体の4分の3を相続し、残りの4分の1を兄弟姉妹で分けることになります。例えば、配偶者と兄弟3人の場合、配偶者が4分の3、各兄弟が12分の1ずつ相続することになります。このように、状況に応じて相続分が大きく変わるため、正確な把握が重要です。

 

代襲相続について

代襲相続は、本来相続人となるはずだった人が既に亡くなっている場合に、その子どもが代わりに相続人となる仕組みです。兄弟姉妹の相続でも、この代襲相続が発生することがあります。

 

例えば、被相続人の姉が既に他界している場合、その姉の子どもたちが代襲相続人となります。代襲相続では、本来の相続分をその代襲相続人たちで均等に分けることになります。

 

半血兄弟の場合の相続分

半血兄弟とは、父母のどちらか一方だけを同じくする兄弟のことを指します。例えば、父親の再婚により生まれた子どもは、前の結婚で生まれた子どもとは半血兄弟関係になります。

 

相続において、半血兄弟の相続分は全血兄弟(父母両方が同じ兄弟)の相続分の2分の1と定められています。例えば、全血の姉と半血の弟がいる場合、姉が3分の2、弟が3分の1を相続することになります。

 

子なし・親なし・兄弟ありの相続で起こりやすい問題

子どもも親もいない状況での相続には、特有の問題が発生しやすくなります。相続人の特定が困難になったり、遺産分割の話し合いが難航したりするケースが少なくありません。これらの問題について、具体的に見ていきましょう。

 

相続人の把握が難しい

子どもも親もいない場合、相続人となる兄弟姉妹の全容を把握することが難しくなることがあります。特に、被相続人と長年疎遠になっていた兄弟姉妹がいる場合や、海外に移住している兄弟姉妹がいる場合は、その存在自体を確認することが困難な場合があります。

 

また、代襲相続が発生している場合、甥や姪の存在も確認する必要が出てきます。さらに、父母の再婚などにより、半血兄弟の存在を知らなかったというケースも珍しくありません。相続人の把握が不十分だと、後々大きなトラブルの種になる可能性があるため、慎重な調査が求められます。

 

遺産分割協議がまとまりにくい

兄弟姉妹間での遺産分割協議は、親子間の相続と比べて合意形成が難しくなる傾向があります。兄弟姉妹の中で被相続人との親密度に差があったり、各自の経済状況が大きく異なっていたりすると、意見の相違が生じやすくなります。

 

また、代襲相続人が含まれる場合は、さらに状況が複雑化します。遺産分割協議がまとまらない場合、最終的には家庭裁判所での調停や審判に至ることもあります。こうなると、時間と費用がかさむだけでなく、兄弟姉妹間の関係悪化にもつながりかねません。

 

相続手続きが複雑になりやすい

子なし・親なし・兄弟ありの相続では、相続人の数が多くなる可能性が高くなります。兄弟姉妹が多い場合や代襲相続が発生している場合は、相続人の数が増加します。相続人が多いと、必要な書類の収集や同意の取得に多大な時間と労力がかかります。

 

また、相続財産の全容把握も困難になることがあります。被相続人と疎遠だった場合、どのような財産があるのか分からないことも少なくありません。さらに、相続税の申告が必要な場合は、計算や手続きがより複雑になります。これらの煩雑な手続きを適切に行わないと、後々問題が発生する可能性が高まります。

 

子なし・親なし・兄弟ありの相続対策

子どもも親もいない場合の相続では、様々な問題が起こる可能性があります。これらの問題を回避し、円滑な相続を実現するためには、適切な対策を講じることが重要です。ここでは、主な相続対策について説明します。

 

遺言書の作成

遺言書は、自分の財産をどのように分配するかを事前に決めておく重要な文書です。子どもも親もいない場合、遺言書を作成することで、兄弟姉妹以外の人に財産を残すことも可能になります。例えば、世話になった甥や姪、親しい友人、あるいは慈善団体などに財産を遺贈することができます。

 

また、兄弟姉妹の中でも特定の人に多くの財産を残したい場合にも、遺言書が有効です。遺言書があれば、遺産分割協議が不要になるため、相続手続きがスムーズになります。ただし、遺言書の作成には法律で定められた形式があるため、専門家のアドバイスを受けながら作成することが望ましいでしょう。

 

生前贈与の活用

生前贈与とは、存命中に財産を他の人に贈与することです。相続対策として生前贈与を活用することで、相続時の遺産の額を減らし、相続手続きを簡素化できる可能性があります。例えば、特定の兄弟姉妹や甥姪に生前贈与をすることで、その人たちへの財産移転を事前に済ませることができます。

 

ただし、生前贈与には贈与税がかかる場合があるため、税制面での考慮が必要です。また、相続時精算課税制度を利用することで、生前贈与と相続を一体的に捉えた税制優遇を受けられる場合もあります。生前贈与を活用する際は、自身の生活に支障が出ないよう計画的に行うことが大切です。

 

家族信託の検討

家族信託は、自分の財産を信頼できる人(受託者)に託し、自分や家族のために管理・処分してもらう仕組みです。子どもも親もいない場合、信頼できる兄弟姉妹や甥姪を受託者にすることで、自分の財産を適切に管理してもらうことが可能になります。

 

家族信託を利用すると、認知症になった場合でも財産管理、処分ができるほか、死後の財産分配まで指示しておくことができます。例えば、「自分が亡くなった後、特定の兄弟に生活費を定期的に給付し、残りは慈善団体に寄付する」といった複雑な指示も可能です。

 

ただし、家族信託は比較的新しい制度であり、設定には専門的な知識が必要です。検討する際は、司法書士などの専門家へ相談することをお勧めします。

 

司法書士に依頼するメリット

子なし・親なし・兄弟ありの相続は複雑になりがちです。このような場合、司法書士に相談し、サポートを受けることで、様々なメリットがあります。ここでは、司法書士に依頼することのメリットについて説明します。

 

相続手続きの円滑化

司法書士は相続手続きに精通した専門家です。相続人の特定から必要書類の収集、各種手続きの代行まで、幅広い支援を提供します。特に、兄弟姉妹が相続人となる場合、相続人の把握や連絡調整が困難になりがちですが、司法書士がこれらの業務を代行することで、手続きをスムーズに進めることができます。

 

また、相続財産の調査や評価、遺産分割協議書の作成なども司法書士の得意分野です。複雑な相続でも、司法書士のサポートを受けることで、手続きの漏れや間違いを防ぎ、円滑に相続を進められます。

 

トラブル防止と解決

相続では様々なトラブルが発生する可能性がありますが、司法書士はそのようなトラブルの防止と解決をサポートします。例えば、遺産分割協議がまとまらない場合、司法書士が中立的な立場で調整役を務めることで、話し合いを円滑に進められることがあります。

 

また、相続に関する法律知識を持つ司法書士のアドバイスを受けることで、将来的なトラブルを未然に防ぐことも可能です。さらに、すでにトラブルが発生している場合でも、司法書士が適切な対応方法を提案し、解決に向けてサポートします。

 

専門家のサポートを受けることで、相続に関する不安や心配を軽減できるのも大きなメリットと言えるでしょう。

 

まとめ

子なし・親なし・兄弟ありの相続は、一般的な相続と比べて複雑な様相を呈することがあります。相続人の把握が難しくなったり、遺産分割協議がまとまりにくくなったりするなど、様々な問題が発生する可能性があります。

 

遺言書の作成、生前贈与の活用、家族信託の検討など有効な対策を講じることで、これらの問題を回避し、円滑な相続を実現できます。特に、遺言書は自分の意思を明確に示し、財産の分配方法を具体的に指定できる重要な手段です。

 

相続に関する疑問や不安がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。司法書士法人しもいち事務所では、子なし・親なし・兄弟ありの相続を含む、複雑な相続案件に対応しています。

 

相続人の特定から遺産分割協議のサポート、各種手続きの代行まで、幅広いサービスをご提供いたします。相続に関する悩みや疑問がある方は、お気軽に当事務所へご相談ください。

 

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離婚後の相続トラブルを防ぐ方法とは?知っておくべき重要ポイントを解説

離婚後の相続は複雑で、トラブルが発生しやすい問題です。元配偶者との関係や子供の権利、再婚した場合の相続など、さまざまな要素を考慮する必要があります。この記事では、離婚後の相続に関する重要なポイントについて解説します。

 

離婚した元配偶者の相続権

離婚後の相続において、元配偶者の権利は大きく変わります。ここでは、離婚後の相続権の消滅と、再婚した場合の相続権について詳しく見ていきます。

 

離婚後の相続権の消滅

離婚すると、元配偶者の相続権は完全に消滅します。これは、婚姻関係が解消されたことにより、法律上の夫婦関係がなくなるためです。

 

例えば、Aさんが元夫Bさんと離婚した後、Bさんが亡くなった場合、Aさんには相続権がありません。たとえ長年連れ添った夫婦であっても、離婚後は他人同然の関係となり、相続の対象外となります。

 

ただし、離婚時に財産分与が行われていない場合は、別途請求できる可能性があります。これは相続とは異なる権利であり、離婚から2年以内に行使する必要があります。

 

再婚した場合の相続権

元配偶者が再婚した場合、新しい配偶者が相続権を持つことになります。例えば、先ほどの例でBさんが再婚していた場合、Bさんの新しい妻Cさんが相続権を持ちます。Cさんの相続分は、他の相続人(子供など)がいる場合でも、原則として遺産の2分の1となります。

 

再婚後の相続では、前婚の子供と新しい配偶者との間でトラブルが起きやすいため、事前に話し合いや対策をしておくことが重要です。

 

子供の相続権と親権の関係

離婚後も子供の相続権は変わりませんが、親権との関係で誤解が生じることがあります。ここでは、子供の相続権と親権の関係について詳しく説明します。

 

離婚後も変わらない子供の相続権

離婚後も子供の相続権は変わりません。親が離婚しても、親子関係は継続するためです。例えば、父親と母親が離婚し、母親が親権者となった場合でも、父親が亡くなった際には、その子供は父親の遺産を相続する権利を持ちます。

 

これは、親権の有無に関わらず適用されます。つまり、離婚後に父親と疎遠になっていたとしても、法律上の親子関係が続いている限り、子供の相続権は保たれます。

 

ただし、養子縁組で法的な親子関係が発生したときに、それが解消された場合は別です。離婚後も子供の相続権が継続することを理解しておくことで、将来的なトラブルを防ぐことができます。

 

親権と相続権の違い

親権と相続権は別のものです。親権は未成年の子供の監護や教育、財産管理などの権利と義務を指します。一方、相続権は親の財産を相続する権利のことです。離婚の際に親権を失った親でも、その子供に対する相続権を持ち続けます。

 

例えば、離婚して父親が親権を失い、母親が親権者になったとしても、父親が亡くなった際には子供は父親の遺産を相続する権利があります。ただし、未成年の子供の場合、相続に関する手続きは親権者が代わりに行うことになります。

 

元配偶者の子供が相続人になる場合

離婚後、元配偶者の子供が相続人になる場合があります。ここでは、未成年の子供と成人した子供の場合の手続きの違いについて説明します。

 

未成年の子供の場合の手続き

未成年の子供が相続人になる場合、親権者が代わりに相続の手続きを行います。例えば、父親が亡くなり、離婚して親権を持つ母親と未成年の子供がいる場合、母親が子供の代わりに相続手続きを行います。

 

ただし、親権者と子供の利益が相反する可能性がある場合は、家庭裁判所が選任する特別代理人が必要になることがあります。

 

未成年者の相続では、子供の利益を最優先に考えることが重要です。将来的なトラブルを避けるためにも、専門家に相談しながら慎重に手続きを進めることをおすすめします。

 

成人した子供の場合の手続き

成人した子供の場合、本人が直接相続手続きを行います。例えば、離婚した父親が亡くなり、成人した子供がいる場合、その子供は自分で相続の権利を行使します。

 

具体的には、遺産分割協議に参加したり、必要な書類を提出したりします。ただし、離婚後に疎遠になっていた場合、相続の事実を知らないこともあるでしょう。その場合は、他の相続人や親族は、成人した子供に相続の事実を知らせる必要があります。

 

成人していても相続の知識が乏しい場合も多いため、困った際には司法書士などの専門家からのサポートを受けることも検討してみてください。

 

再婚家族がいる場合の相続

再婚家族がいる場合、相続はより複雑になります。ここでは、再婚相手と前婚の子供の相続分、および再婚相手の連れ子の相続権について説明します。

 

再婚相手と前婚の子供の相続分

再婚相手と前婚の子供がいる場合、法定相続分は次のようになります。再婚相手(配偶者)が遺産の2分の1、残りの2分の1を子供たちで均等に分けます。

 

例えば、Aさんが再婚相手Bさんと、前婚の子供Cさんがいる状態で亡くなった場合、Bさんが遺産の2分の1、Cさんが残りの2分の1を相続します。前婚の子供が複数いる場合は、その2分の1をさらに人数で均等に分けます。

 

ただし、これはあくまで法定相続分であり、実際の相続では遺産分割協議により変更される可能性があります。再婚家族の相続では、前婚の子供と再婚相手の間でトラブルが起きやすいため、生前に話し合いを重ねたり、遺言書を作成したりするなどの対策が重要です。

 

再婚相手の連れ子の相続権

再婚相手の連れ子は、原則として相続権はありません。再婚しただけでは当然に連れ子と再婚相手に親子関係があるとは言えないためです。ただし、養子縁組をしている場合は例外です。養子縁組をすると、法律上の親子関係が生じるため、連れ子にも相続権が発生します。

 

例えば、Aさんが再婚相手Bさんの連れ子Cさんと養子縁組をした場合、AさんがなくなったときにCさんは相続人となります。この場合、Cさんは実子と同じ相続分を得る権利があります。

 

ただし、養子縁組には様々な影響があるため、慎重に検討する必要があります。再婚相手の連れ子に財産を残したい場合は、遺言書を作成するのも一つの方法です。遺言書があれば、法定相続人でない人にも財産を遺すことができます。

 

まとめ

離婚後の相続は、様々な要因が絡み合う複雑な問題です。離婚後は元配偶者の相続権が消滅しますが、子供の相続権は変わりません。親権と相続権は別のものであり、親権を失っても子供への相続権は継続します。

 

未成年の子供が相続人になる場合は親権者が手続きを行い、成人した子供の場合は本人が直接手続きを行います。再婚家族がいる場合、再婚相手と前婚の子供の間で相続が行われ、連れ子の相続権は養子縁組の有無により変わります。

 

これらの問題に対処するには、事前の準備と家族間の話し合いが重要です。特に離婚経験がある場合は、将来の相続トラブルを防ぐため、早めに対策を講じなければいけません。しかし、相続問題は一人ひとりの状況が異なるため、この記事の情報だけでは解決できない場合もあります。

 

具体的な相談や詳しいアドバイスが必要な場合は、経験豊富な相続の専門家に相談することが大切です。私たち司法書士法人しもいち事務所では、離婚後の相続に関する様々な相談も受け付けています。お気軽にご相談ください。

 

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相続人が認知症の場合の対応とは?相続手続きのポイントを解説

相続手続きは複雑で時間がかかるものですが、相続人の中に認知症の方がいる場合、さらに難しい状況になります。この記事では、認知症の相続人がいる場合の問題点や対応方法、事前対策について解説します。

 

認知症の相続人がいる場合の問題点

認知症の相続人がいると、相続手続きを進める上でいくつかの障害が生じます。ここでは、主な問題点について説明します。

 

遺産分割協議ができない

遺産分割協議は、相続人全員が参加して行う必要があります。しかし、認知症の相続人は判断能力が低下しているため、適切な意思表示ができません。そのため、通常の方法では遺産分割協議を行うことが難しくなります。

例えば、父親が亡くなり、母親が認知症で子どもが相続人という場合、母親は遺産分割協議に参加できません。そのため、遺産の分け方を決められず、相続手続きが止まってしまいます。また、認知症の相続人の代わりに他の家族が署名や捺印をしても、それは無効であり、場合によっては法律違反になる可能性もあります。

 

預金口座の凍結リスク

相続が発生し、金融機関が被相続人(亡くなった人)の死亡を知ると、被相続人の預金口座は一時的に凍結されます。通常は代表相続人を選任するか、遺産分割協議が整えば解除されますが、認知症の相続人がいると選任も協議ができないため、長期間凍結されたままになる可能性があります。

これにより、葬儀費用や相続税の支払い、さらには認知症の相続人の生活費の確保など、必要なお金を引き出せない状況に陥ることがあります。金融機関によっては、一定の条件下で少額の引き出しを認めることもありますが、それだけでは十分ではありません。

 

不動産の共有問題

相続財産に不動産がある場合、認知症の相続人がいると別の問題が発生します。遺産分割協議はできないですが、法定相続分に従って不動産を相続人全員の名義を入れて相続することは可能です。この場合不動産が相続人全員の共有状態になることを意味します。

共有状態の不動産は、売却や賃貸、リフォームなど、何かを行う際に共有者全員の同意が必要です。認知症の相続人は判断能力がないため同意できず、結果として不動産の活用が難しくなります。

例えば、実家を売却して認知症の相続人の介護費用に充てたいと思っても、その相続人本人の同意が得られないため売却できない、という状況に陥る可能性があります。そもそも法定相続分で共有することがふさわしくない場合がほとんどです。

 

認知症の相続人がいる場合の対応方法

認知症の相続人がいる場合でも、相続手続きを進める方法はあります。ここでは、主な対応方法について説明します。

 

成年後見制度の利用

成年後見制度は、認知症などで判断能力が不十分な人を法律的に支援する制度です。相続人が認知症の場合、この制度を利用することで相続手続きを進めることが可能となります。

成年後見人は、認知症の相続人に代わって遺産分割協議に参加したり、必要な書類に署名したりすることができます。例えば、母親が認知症で相続人になっている場合、成年後見人が母親の利益を考えながら遺産分割協議に参加します。

ただし、成年後見人の選任には家庭裁判所への申立てが必要で、手続きに時間がかかります。また、成年後見人は本人(認知症の相続人)の利益を最優先に考えなければならないため、家族が望むような柔軟な遺産分割が難しいこともあります。

 

法定相続分での相続

遺産分割協議ができない場合の別の選択肢として、法定相続分に従って相続を行う方法があります。法定相続分とは、民法で定められた相続分のことで、例えば配偶者と子どもがいる場合、配偶者が2分の1、子どもが均等に2分の1を相続します。

この方法のメリットは、遺産分割協議を行わなくても相続手続きを進められることです。例えば、不動産の相続登記は、相続人の代表者が単独で申請できます。また、預貯金の払い戻しも、一定額まで可能な場合があります。

ただし、不動産が共有状態になること、代表者以外は権利証が発行されないことや相続税の優遇措置が使えないなど、様々な問題が生じる可能性もあるため、慎重に検討する必要があります。

 

遺言書がある場合の手続き

被相続人が遺言書を残していた場合、認知症の相続人がいても相続手続きがスムーズに進む可能性があります。遺言書の内容に従って相続を進められるため、遺産分割協議が不要になるからです。

例えば、父親が遺言書を残し、「不動産は長男に相続させる」と書いてあれば、認知症の母親がいても、その遺言に従って長男が不動産を相続することができます。ただし、遺言の内容や遺言執行者の状況によっては、手続きが複雑になることもあります。

遺言書があっても、認知症の相続人に不動産を相続させる内容だった場合は、成年後見制度を利用しないと登記申請ができません。また、遺言執行者が認知症の相続人だった場合は、新たな遺言執行者を選任する必要があります。

 

認知症の相続人がいる場合の事前対策

認知症の相続人がいる場合の問題を避けるため、事前に対策を講じることが重要です。ここでは、主な事前対策について説明します。

 

遺言書の作成

遺言書は、相続に関する自分の意思を明確に示すことができる重要な書類です。特に、認知症になる可能性がある場合、早めに遺言書を作成しておくことが望ましいです。

遺言書には、誰にどの財産を相続させるかを具体的に記載できます。例えば、「自宅は長男に相続させる」「預貯金は妻と子どもたちで均等に分ける」といった内容を書くことができます。これにより、将来認知症になっても、自分の意思に沿った相続が行われる可能性が高くなります。

遺言書には、主に自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類があります。自筆証書遺言は自分で書くため費用がかかりませんが、法的な要件を満たしていないと無効になる可能性があります。また遺言者の死亡後手続きに入るには検認手続が必要です。一方、公正証書遺言は公証役場で作成するため費用はかかりますが、法的な効力が確実で、紛失や偽造のリスクも低くなります。

遺言書を作成する際は、相続人全員の状況や税金の問題なども考慮する必要があるため、専門家に相談しながら進めることが賢明です。

 

家族信託の活用

家族信託は、認知症に備える新しい財産管理の方法として注目されています。信頼できる家族に財産の管理を任せる仕組みで、将来認知症になっても、スムーズに財産管理や相続を行うことができます。

例えば、父親が元気なうちに、自宅と預貯金を長男に信託し、「父親の生活費に使うこと」「将来は子どもたちに相続すること」などの条件をつけることができます。こうすることで、父親が認知症になっても、長男が信託契約に基づいて財産を管理・処分できるため、成年後見制度を利用せずに柔軟な対応が可能になります。

ただし、家族信託は比較的新しい制度である上に専門的な知識が必要なため、導入を検討する場合は必ず専門家に相談しましょう。

 

司法書士に相談するメリット

司法書士は、相続手続きや成年後見制度、遺言書作成などの法律事務を専門とする資格者です。認知症の相続人がいる場合、司法書士に相談することで多くのメリットがあります。

 

幅広い知識に基づくアドバイス

司法書士は相続に関する幅広い知識を持っているため、個々の状況に応じた適切なアドバイスを受けられます。例えば、成年後見制度を利用すべきか、遺言書を作成すべきか、家族信託が適しているかなど、様々な選択肢の中から最適な方法を提案してくれます。認知症の相続人がいる複雑なケースでも、法律の専門家として適切な対応策を示してくれます。

 

書類作成と手続きのサポート

司法書士は相続に関する書類作成や手続きのエキスパートです。遺言書の作成補助や成年後見制度の申立書類の作成、相続登記の手続きなど、複雑な事務作業を正確に行ってくれます。これにより、手続きのミスを防ぎ、スムーズに相続を進めることができます。特に認知症の相続人がいる場合は手続きが複雑になりがちですが、司法書士のサポートがあれば安心して進められます。

 

中立的な立場からの助言

司法書士は中立的な立場から相談に乗ってくれるため、相続人間のトラブルを未然に防ぐことにも役立ちます。特に認知症の相続人がいる場合、家族間で意見が対立しやすいため、第三者の専門家の助言は非常に重要です。司法書士は法律的な観点から公平な判断を下し、円滑な相続の実現をサポートしてくれます。

 

まとめ

認知症の相続人がいる場合の相続は、通常の相続よりも複雑で難しい問題が多くあります。遺産分割協議ができない、預金口座が凍結されるなど、様々な障害が生じる可能性があります。

これらの問題に対処するためには、成年後見制度の利用などの方法があります。また、事前対策として遺言書の作成や家族信託の活用も効果的です。これらの対応方法や対策には、それぞれメリットとデメリットがあり、個々の状況に応じて最適な方法を選ぶ必要があります。そのため、専門家である司法書士に相談し、適切なアドバイスを受けることが非常に重要です。

司法書士法人しもいち事務所では、認知症の相続人がいる場合の相続問題に関する相談を承っています。経験豊富な司法書士が、お客様の状況に応じた最適な解決策を提案いたします。相続でお悩みの方はお気軽にご相談ください。

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農地の相続トラブルを防ぐ!知っておきたい注意点と対策

農地の相続は、一般的な不動産相続とは異なる複雑さがあります。農地法による制限や相続税の問題など、特有の課題が多く存在します。この記事では、農地相続に関する重要な注意点とトラブルを防ぐための効果的な対策について解説します。

 

農地相続の特徴と難しさ

農地の相続には、他の不動産にはない独特の特徴があります。これらの特徴を理解することが、スムーズな相続手続きの第一歩となります。

 

農地法による制限

農地法は、農地の適切な利用と保全を目的として制定された法律です。この法律により、農地の所有権移転や転用には厳しい制限が設けられています。

 

農地を相続する場合、相続人が農業従事者でない場合は、放置しておくと耕作放棄地となり、固定資産税の負担のみが必要となるだけではなく、相続税の猶予が受けられません。また、相続した農地を宅地などに転用する際にも、農業委員会の許可が必要です。

 

これらの制限は、相続後の土地利用に大きな影響を与える可能性があるため、事前に十分な理解と対策が必要となります。

 

相続登記の義務化と期限

2024年4月1日から、相続による不動産の所有権移転登記が義務化されました。これにより、相続人は相続の開始を知った日から3年以内に相続登記を行う必要があります。

 

農地の場合、この相続登記に加えて、農業委員会への届出も必要です。これらの手続きを期限内に行わない場合、過料が科される可能性があるため、注意しましょう。

 

評価額の問題

農地の評価額は、その利用状況や所在地によって大きく異なります。特に、市街化区域内の農地や宅地化が進んだ地域にある農地は、高額な評価額となる可能性があります。

 

一方で、純粋な農業用地として利用されている農地は、比較的低い評価額となることが多いです。この評価額の差異が、相続税の計算や遺産分割協議の際に問題となることがあります。

 

農地相続で起こりやすいトラブル

農地の相続では、様々なトラブルが発生する可能性があります。これらのトラブルを事前に理解し、対策を講じることが重要です。この章では農地相続で起こりやすいトラブルについて解説します。

 

遺産分割協議が難航するケース

農地の相続では、遺産分割協議が難航するケースが少なくありません。その主な理由として以下が挙げられます。

 

  • 「農業継続の意思がある相続人」と「そうでない相続人」の意見の相違
  • 農地の評価額をめぐる争い
  • 農地の将来的な利用方法に関する意見の相違

 

これらの問題により、遺産分割協議が長期化し、相続登記の期限を過ぎてしまう可能性があります。

 

耕作放棄地になるリスク

相続人の中に農業を継続する意思がある人がいない場合、相続した農地が耕作放棄地になるリスクがあります。

 

耕作放棄地は、雑草の繁茂や病害虫の発生源となる可能性があり、周辺の農地にも悪影響を及ぼします。また、固定資産税は継続して課税されるため、経済的な負担も発生します。

 

相続税の負担が大きくなる可能性

農地の評価額が高額な場合、相続税の負担が大きくなる可能性があります。特に、市街化区域内の農地や宅地化が進んだ地域にある農地は、宅地並みの評価額となることがあり、相続税の負担が予想以上に大きくなることがあります。

 

また、相続税の納税猶予制度を利用する場合、継続的な営農が条件となるため、農業を継続する意思がない相続人にとっては、大きな負担となる可能性があります。

 

農地相続の手続きと注意点

農地の相続手続きには、一般的な不動産相続とは異なる点がいくつかあります。これらの手続きと注意点を理解することが、スムーズな相続のために重要です。

 

相続登記の流れ

農地の相続登記は、以下のような流れで行われます。

 

  • 相続人の確定と遺産の把握
  • 遺産分割協議の実施
  • 必要書類の収集(戸籍謄本、遺産分割協議書など)
  • 法務局への登記申請

 

農地の場合、農業委員会への届出の期限の方が早く到来するため注意が必要です。

 

農業委員会への届出

農地を相続した場合、農業委員会への届出が必要です。この届出は、相続を知った日から10ヶ月以内に行う必要があります。

 

届出には、以下のような書類が必要となります。

  • 農地法第3条の3第1項の規定による届出書
  • 相続関係を証明する書類(戸籍謄本など)
  • 農地の登記事項証明書

 

届出を怠ると過料の対象となる可能性があるため、必ず期限内に手続きを行いましょう。

 

相続税の納税猶予制度

農地を相続した場合、一定の条件を満たせば相続税の納税猶予制度を利用することができます。この制度を利用すると、農業を継続することを条件に、農地にかかる相続税の納税が猶予されます。

 

ただし、この制度には以下のような注意点があります。

  • 継続的な営農が必要
  • 定期的な報告義務がある
  • 農地を売却したり転用すると猶予された税金を納付する必要がある

 

この制度を利用するかどうかは、将来の農業継続の意思や経済的な状況を考慮して慎重に判断する必要があります。

 

農地相続のトラブルを防ぐ対策

農地相続のトラブルを防ぐためには、事前の対策が重要です。効果的な対策を3つ紹介します。

 

  • 遺言書の活用
  • 生前贈与の検討
  • 農地の売却や転用の可能性

 

遺言書の活用

遺言書は、相続人間のトラブルを防ぐ有効な手段の一つです。遺言書に農地の相続人を明確に指定しておくことで、遺産分割協議の長期化を防ぐことができます。

 

遺言書を作成する際は、以下の点に注意する必要があります。

  • 法的効力のある遺言書の形式を選択する(公正証書遺言が望ましい)
  • 農地の相続人が農業を継続できるかどうかを考慮する
  • 他の相続人との公平性にも配慮する

 

生前贈与の検討

生前贈与は、将来の相続トラブルを防ぐ一つの方法です。農業を継続する意思のある後継者に生前に農地を贈与することで、相続時のトラブルを回避できます。

 

ただし、生前贈与には贈与税がかかる可能性があるため、税制面での検討も必要です。また、農地の贈与には農業委員会の許可が必要な場合があるため、事前によく確認しましょう。

 

農地の売却や転用の可能性

相続人の中に農業を継続する意思がない場合、農地の売却や転用を検討することも一つの選択肢です。農地を売却する場合、原則として農業委員会の許可が必要となります。また、農地のまま使用する場合は買主も農業従事者である必要があるため、買主の選定には注意しなければいけません。

 

農地を宅地などに転用する場合も、農業委員会の許可が必要となります。転用が認められるかどうかは、その農地の立地条件や周辺の状況によって判断されます。

 

まとめ

農地の相続は一般的な不動産相続とは異なる複雑さがあり、農地法による制限、相続登記の義務化、評価額の問題など、様々な課題があります。

 

これらの課題に対応するためには、事前の準備と適切な対策が重要です。遺言書の活用や生前贈与の検討、必要に応じた農地の売却や転用の検討など、状況に応じた適切な対策を講じましょう。

 

農地相続の手続きや対策に不安がある場合は、法律の専門家に相談することをおすすめします。司法書士法人しもいち事務所では、農地相続に関する様々な相談に対応しています。それぞれの状況に応じた適切なアドバイスを提供し、スムーズな相続手続きをサポートいたします。

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NISAって相続できる?資産承継と投資の新たな可能性

ISA(少額投資非課税制度)は、個人投資家の資産形成を後押しする制度として注目を集めています。しかし、NISAを利用している人が亡くなった場合、その資産はどのように扱われるのでしょうか。この記事では、NISAと相続の関係、資産承継における注意点について解説します。

 

NISAの基本と2024年からの変更

NISAは2014年に導入され、2024年からは大幅に拡充されます。新制度の特徴を理解することは、資産形成と相続対策の両面で重要です。

 

NISAとは何か

NISAは、年間の投資枠内で購入した上場株式や投資信託の配当金や売却益が非課税となる制度です。個人投資家の資産形成を促進し、「貯蓄から投資へ」の流れを加速させる目的で導入されました。

 

2023年までのNISAでは、一般NISAとつみたてNISAの2種類があり、それぞれ年間120万円、40万円の非課税投資枠が設定されていました。これらは別々の制度として運用されており、投資家はどちらか一方を選択する必要がありました。

 

新NISAの特徴と拡充された非課税枠

2024年からスタートする新NISAでは、制度が一本化され、より柔軟な投資が可能になります。新制度では「成長投資枠」と「つみたて投資枠」が設けられ、両方を併用することが可能です。

 

成長投資枠の年間投資上限額は240万円、つみたて投資枠は120万円となり、合計で年間360万円まで非課税で投資することが可能となります。これは旧制度と比較して大幅な拡大であり、より多くの資産を非課税で運用する機会が広がります。

 

非課税期間の無期限化がもたらす影響

新NISAのもう一つの大きな特徴は、非課税期間が無期限となることです。旧制度では一般NISAが5年間、つみたてNISAが20年間と期間が限定されていましたが、新制度では期間の制限がなくなります。

 

この変更により、長期的な視点での資産形成がより有利になります。市場の短期的な変動に左右されず、長期的な成長を見据えた投資戦略を立てやすくなるでしょう。また、非課税期間の無期限化は、相続を見据えた資産形成にも大きな影響を与える可能性があります。長期的に資産を育てながら、次世代への円滑な資産移転を考える上で、新NISAは重要な選択肢となるかもしれません。

 

相続時のNISA口座の取り扱い

NISAは個人投資家の資産形成を支援する制度ですが、口座保有者が亡くなった場合、その取り扱いには特別な注意が必要です。

 

NISA口座保有者が亡くなった場合の流れ

NISA口座の保有者が亡くなった場合、まず相続人は金融機関に対して「非課税口座開設者死亡届出書」を提出する必要があります。これは、被相続人の死亡を金融機関に通知し、NISA口座の閉鎖手続きを開始するためのものです。

 

この届出書の提出は、相続人が被相続人の死亡を知った日以後、遅滞なく行わなければなりません。提出が遅れると、手続きが滞る可能性があるため、速やかな対応が求められます。

 

相続人への資産移管の手続き

NISA口座内の資産を相続人の口座に移管する場合、「相続上場株式等移管依頼書」を金融機関に提出する必要があります。この手続きにより、被相続人のNISA口座内の株式や投資信託などの金融商品が、相続人の口座に移されます。

 

ただし、注意すべき点として、NISA口座内の資産を相続人のNISA口座に直接移管することはできません。相続人の一般口座か特定口座に移管されることになります。また、移管先の口座は、被相続人のNISA口座と同一の金融機関に開設されている必要があります。異なる金融機関の口座への移管は認められていないため、相続人は必要に応じて新たに口座を開設する必要があるかもしれません。

 

相続税評価におけるNISA口座内資産の扱い

NISA口座内の資産も、他の金融資産と同様に相続税の対象となります。相続税評価額の算定方法は、一般の上場株式や投資信託と同じです。

 

具体的には、相続が発生した日の終値、もしくは相続が発生した月の毎日の終値の平均額、相続が発生した月の前月の毎日の終値の平均額、相続が発生した月の前々月の毎日の終値の平均額のうち、最も低い価額で評価されます。

 

この評価方法により、相続税評価額が相続発生時の時価よりも低くなる可能性があります。ただし、相続税評価額が低くなったからといって、必ずしも相続税の負担が軽減されるわけではありません。相続財産全体の価額や法定相続人の数などによって、実際の相続税額は変動します。

 

NISAと相続|知っておくべき重要ポイント

NISAと相続の関係には、いくつかの重要なポイントがあります。これらを正しく理解することで、より効果的な資産承継の計画を立てることが可能となります。

 

NISA口座の相続可否と制限

まず押さえておくべき重要なポイントは、NISA口座自体は相続の対象とはならないということです。NISA口座は個人に紐づいた口座であり、その非課税のステータスを他人に引き継ぐことはできません。

 

被相続人のNISA口座内の資産は、相続人の一般口座や特定口座に移管されることになります。つまり、NISA口座の非課税メリットは被相続人の死亡時点で失われ、相続後は通常の課税口座として扱われることになります。

 

また、NISA口座内の資産を相続人のNISA口座に直接移管することもできません。これは、NISAの非課税枠を実質的に引き継ぐことを防ぐための制限です。

 

相続時の含み益と配当金の税務上の取り扱い

NISA口座内の資産を相続する際の税務上の取り扱いには、特殊な点があります。被相続人の死亡時点でNISA口座内の資産に含み益がある場合、その含み益は非課税となります。つまり、被相続人が購入した時点から死亡時点までの値上がり益に対しては課税されません。

 

しかし、相続後の値上がり益については、一般の口座と同様に課税の対象となります。相続人が資産を売却する際には、被相続人の死亡時点の価額が取得価額となり、それ以降の値上がり益に対して課税されることになります。

 

また、被相続人の死亡後に発生した配当金や分配金については、NISA口座の非課税措置は適用されません。これらの収入は、相続人の課税所得として扱われます。

税務面について詳しくは税理士に確認してください(弊事務所が提携している税理士をご紹介することも可能です。)

相続後のNISA資産運用における注意点

相続によってNISA口座から移管された資産を運用する際には、いくつかの注意点があります。

 

まず、移管された資産は通常の課税口座で管理されることになるため、売却益や配当金に対して課税されます。そのため、相続人は税負担を考慮した運用戦略を立てる必要があります。相続人自身がNISA口座を持っている場合でも、相続した資産をそのNISA口座に移すことはできません。新たにNISA口座で投資を行う場合は、別途資金を用意する必要があります。

 

また、相続した資産の評価額や取得時期によっては、売却のタイミングや方法によって税負担が大きく変わる可能性があります。そのため、税理士や金融機関のアドバイザーに相談しながら、最適な運用方法を検討することが重要です。

 

まとめ

NISAは個人の資産形成を支援する有効な制度ですが、相続との関係では複雑な側面があります。NISA口座自体は相続できませんが、口座内の資産は相続税の対象となります。相続時の含み益は非課税ですが、相続後の運用益には課税され、相続したNISA資産は相続人の一般口座や特定口座に移管されます。

 

NISAを活用した資産承継では、生前贈与との組み合わせや他の資産承継手法との併用を検討することが重要です。長期的な視点で計画を立て、税制変更にも注意を払う必要があります。資産承継や相続対策は個々の状況によって最適な方法が異なるため、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

 

当事務所では、NISAを含む資産承継や相続に関する幅広い相談に対応しています。相続手続きはもちろん、遺言書作成や生前贈与のアドバイス、さらにはNISAを活用した資産形成戦略の立案まで、お客様一人ひとりの状況に合わせた丁寧なサポートを提供しています。NISAや相続に関する疑問、また将来の資産承継に不安がある場合は、しもいち事務所までお気軽にご相談ください。

 

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相続

相続手続きに必要な書類とは?入手方法や注意点を解説

相続手続きは複雑で、必要な書類も多岐にわたります。どんな書類が必要で、どこで入手できるのか、多くの方が戸惑われます。この記事では、相続手続きに必要な書類の種類や入手方法、注意点について詳しく解説します。

 

相続手続きの基本と必要書類の概要

相続手続きは被相続人の財産を法定相続人に引き継ぐ重要なプロセスです。手続きを円滑に進めるためには、適切な書類の準備が不可欠です。

 

相続手続きに必要な基本的な書類には、以下のようなものがあります。

  • 戸籍謄本・除籍謄本・原戸籍
  • 遺言書(ある場合)
  • 遺産分割協議書
  • 印鑑証明書
  • 被相続人の住民票除票
  • 相続人の住民票の写し
  • 固定資産評価証明書(直近固定資産税納付書でもよい)
  • 預貯金の残高証明書

 

これらの書類は、相続の状況や対象となる財産によって異なります。例えば、不動産の相続には登記簿謄本が必要ですし、預貯金の相続には金融機関指定の書類が求められることがあります。

 

戸籍謄本・除籍謄本・原戸籍謄本の重要性

相続手続きにおいて、戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本は最も基本的かつ重要な書類です。これらの書類は法定相続人を特定するために不可欠です。

 

戸籍謄本・除籍謄本・原戸籍とは

戸籍謄本は、現在の戸籍の写しです。また除籍謄本は過去の戸籍の写しで、死亡や婚姻などにより除かれた戸籍のことを指します。さらに原戸籍謄本とは法改正前の古い様式の戸籍謄本のことです。相続手続きでは、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍が必要となります。

 

戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本を収集することで、以下の情報を確認できます。

  • 被相続人の親族関係
  • 法定相続人の範囲
  • 相続人の生存状況

 

取得方法と注意点

戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本は、被相続人の本籍地がある市区町村役場で取得します。取得には以下の書類が必要です。

 

  • 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
  • 戸籍謄本等交付請求書
  • 手数料

 

注意点として、被相続人の本籍地が生涯で変更されている場合、複数の市区町村から戸籍謄本を取得する必要があります。また、戸籍謄本の取得には時間がかかる場合があるため、早めに準備を始めることが重要です。なお令和6年3月1日から戸籍謄本等の広域交付が始まっており、本籍地以外の市区町村の窓口でも一定の範囲で戸籍謄本等が取得できるようになりました。お近くの役所にお問い合わせください。

 

遺言書がある場合の必要書類

遺言書がある場合、相続手続きはその内容に基づいて進められます。遺言書の種類によって必要な書類が異なります。

 

自筆証書遺言の場合

自筆証書遺言の場合、以下の書類が必要となります。

 

  • 自筆証書遺言書原本
  • 検認調書または検認済証明書
  • 遺言者の戸籍謄本(死亡記載のあるもの)
  • 遺言者ともらう相続人の相続関係が分かる戸籍謄本等

※もらう人が相続人ではない場合は別途の手続になります。

 

自筆証書遺言は、家庭裁判所での検認手続きが必要です。

 

公正証書遺言の場合

公正証書遺言の場合は、以下の書類が必要です。

 

  • 公正証書遺言の正本または謄本
  • 遺言者の戸籍謄本(死亡記載のあるもの)
  • 遺言者ともらう相続人の相続関係が分かる戸籍謄本等

※もらう人が相続人ではない場合は別途の手続になります。

 

公正証書遺言は公証人が作成するため、検認手続きは不要です。

 

遺産分割協議書を作成する場合の必要書類

遺言書がない場合や遺言書の内容と異なる分割を行う場合は、遺産分割協議書を作成します。

 

遺産分割協議書の作成方法

遺産分割協議書は、以下の内容を含めて作成します。

 

  • 被相続人の氏名、死亡日
  • 相続人全員の氏名、続柄
  • 相続財産の内容と分割方法
  • 作成日
  • 相続人全員の署名押印

 

遺産分割協議書は法定の様式はありませんが、上記の内容を漏れなく記載することが重要です。

 

添付すべき書類

遺産分割協議書に添付すべき書類は以下の通りです。

 

  • 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 相続財産の証明書類(不動産登記簿謄本、預金通帳の写しなど)

 

これらの書類は、相続人の資格や財産の内容を証明するために必要です。

 

預貯金の相続手続きに必要な書類

預貯金の相続手続きは、各金融機関の規定に従って行います。

 

金融機関ごとの違い

金融機関によって必要書類が異なる場合がありますが、一般的に以下の書類が求められます。

 

  • 預金通帳または証書
  • 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 遺産分割協議書
  • 相続人の本人確認書類

 ※遺言がある場合は別途の手続きになります。

 

共通して必要な書類

ほぼすべての金融機関で共通して必要となる書類は以下の通りです。

 

  • 被相続人の戸籍謄本(死亡記載のあるもの)
  • 相続人の本人確認書類
  • 相続人の印鑑証明書

 ※遺言がある場合は別途の手続きになります。

金融機関によっては、独自の書式による届出書や同意書が必要な場合もあります。事前に各金融機関に確認することが重要です。

 

不動産の相続登記に必要な書類

不動産の相続登記は、被相続人名義の不動産を相続人名義に変更する手続きです。

 

登記申請書の作成

登記申請書には以下の内容を記載します。

 

  • 申請人の氏名、住所
  • 登記の目的(相続による所有権移転)
  • 登記原因及びその日付(被相続人の死亡日)
  • 登記する不動産の表示
  • 課税価格
  • 登録免許税額

 

固定資産評価証明書の取得

固定資産評価証明書は、不動産の所在地の市区町村役場で取得します。この証明書は、登録免許税の計算に必要です。なお直近年度の固定資産税納付書にも評価額は記載されており、代用可能です。

 

不動産の相続登記に必要な主な書類は以下の通りです。

 

  • 登記申請書
  • 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 被相続人の住民票の除票
  • 不動産をもらう相続人の住民票の写し
  • 固定資産評価証明書

 

相続税申告に必要な書類

相続税の申告は、一定額以上の財産を相続した場合に必要となります。

 

相続税申告が必要なケース

以下の場合、相続税の申告が必要です。

 

  • 相続財産の総額が基礎控除額を超える場合
  • 相続時精算課税制度を利用していた場合

 

基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算します。

 

財産評価に関する書類

相続税申告に必要な主な書類は以下の通りになりますが、詳しくは税理士さんに尋ねてください(当事務所にも提携している税理士さんはいますのでお問い合わせください。)。

 

  • 相続税申告書
  • 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書または遺言書
  • 財産目録
  • 各種財産評価書類(不動産評価書、預金残高証明書など)
  • 債務や葬儀費用の領収書

 

法定相続情報証明制度の活用

法定相続情報証明制度は、戸籍謄本等に代わる公的証明書を取得できる制度です。

 

法定相続情報一覧図の取得方法

法定相続情報一覧図の取得手順は以下の通りです。

 

  1. 申出書と法定相続情報一覧図を作成
  2. 必要書類を準備(戸籍謄本等)
  3. 管轄の法務局に申請
  4. 法務局で審査
  5. 法定相続情報一覧図の写しを受け取る

 

活用できる相続手続き

法定相続情報一覧図は以下の相続手続きで活用できます:

 

  • 不動産の相続登記
  • 預貯金の払戻し
  • 株式の名義変更
  • 相続税の申告

 

ただし、金融機関によっては独自の規定があるため、事前に確認が必要です。

 

相続手続きにおける専門家の役割

相続手続きは複雑で専門的な知識が必要なため、専門家に相談することが有効です。

 

司法書士への相談のメリット

司法書士は以下の面でサポートを提供します。

 

  • 必要書類の収集と作成
  • 相続登記の申請
  • 遺産分割協議のアドバイス
  • 法的手続きの説明

 

司法書士に相談することで、相続手続きを円滑に進められる可能性が高まります。

 

税理士や弁護士との連携

相続税の申告や複雑な遺産分割の場合、税理士や弁護士との連携が必要になることがあります。税理士は相続税の計算や申告を、弁護士は相続に関する法的紛争の解決をサポートします。専門家同士が連携することで、総合的な相続対策が可能です。

 

まとめ

相続手続きに必要な書類は多岐にわたり、その準備には時間と労力がかかります。しかし、適切な書類を用意することで、相続手続きを円滑に進めることができます。

 

司法書士法人しもいち事務所では、相続手続きに関する幅広い相談を承っております。京都市を中心に、地域に根ざした親身な対応で、皆様の相続手続きをしっかりとサポートしてまいります。特に、戸籍謄本の取得や遺産分割協議書の作成、相続登記の申請など、複雑な手続きもわかりやすく解説し、円滑な相続をお手伝いします。また、税理士や弁護士との連携が必要な場合も、適切な専門家をご紹介いたします。

 

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相続放棄のデメリットとは?知っておくべき重要ポイントと注意点

相続放棄は、被相続人の債務や負債を引き継ぎたくない場合に選択される手段です。しかし、この決断には慎重な検討が必要です。相続放棄には様々なデメリットがあり、それらを十分に理解せずに手続きを進めると、後々大きな問題に直面する可能性があります。この記事では、相続放棄の主要なデメリットとその選択に際して注意すべきポイントについて解説します。

 

相続放棄とは何か?基本的な理解

相続放棄を検討する前に、その基本的な概念と法的な位置づけを理解することが重要です。相続放棄は単なる相続の拒否ではなく、法的な手続きを伴う重要な決断です。

 

相続放棄の定義と法的根拠

相続放棄とは、相続人が相続によって得られる権利を放棄し、相続財産を一切承継しないことを意味します。民法第938条に基づいて行われるこの手続きは、相続開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述することで成立します。

 

相続放棄を行うと、法律上はその人が初めから相続人ではなかったものとみなされます。これにより、被相続人の財産に関するすべての権利と義務から解放されます。ただし、この決定は重大な影響を持つため、慎重に検討する必要があります。

 

相続放棄の手続き概要

相続放棄の手続きは、相続開始を知ってから3ヶ月以内に決断し、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述書を提出することから始まります。必要書類を準備し、家庭裁判所で手続きを行い、受理されるのを待ちます。この手続きは一見シンプルに見えますが、その影響は広範囲に及びます。

 

相続放棄のデメリット①新たな相続人の出現

相続放棄を行うと、予期せぬ形で他の家族メンバーに影響が及ぶ可能性があります。これは多くの人が見落としがちな重要なポイントです。

 

相続順位の変動と影響

相続放棄をすると、法定相続人の順位に従って次順位の相続人に相続権が移ります。例えば、子が相続放棄をすると、その相続権は被相続人の両親に移ります。両親が既に亡くなっている場合は、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。この順位の変動により、予期せぬ相続人の出現や相続財産の分配方法の変更、家族関係の複雑化などが起こる可能性があります。

 

家族間のトラブルリスク

相続放棄によって新たな相続人が出現すると、家族間でトラブルが発生するリスクが高まります。例えば、相続放棄をした人が他の家族メンバーに事前に相談せずに手続きを進めた場合、突然相続人となった家族は困惑し、怒りを覚える可能性があります。

 

相続放棄のデメリット②相続放棄は原則撤回できない

相続放棄の重大なデメリットの一つは、一度行うと原則として撤回できない点です。この特性は、相続放棄を検討する際に最も慎重に考慮すべき要素の一つだと言えます。

 

相続放棄の確定性

相続放棄が家庭裁判所に受理されると、その決定は確定的なものとなります。民法では、相続放棄の撤回は原則として認められていません。これは、相続に関する法的安定性を確保するためです。

 

この確定性により、相続財産に対する権利の完全な喪失、相続に関する決定への参加権の喪失、相続に関連する将来の権利主張の不可能性などの影響が生じます。したがって、相続放棄を決断する前に、その影響を十分に理解して慎重に検討する必要があります。

もっとも被相続人の債権者が、相続放棄者が単純承認に当たる行動を取っていたこと等を立証すれば事後的に相続放棄していなかったことになる可能性があります。

 

相続放棄後に判明した財産について

相続放棄をした後に、予期せぬ財産が見つかることがあります。例えば、知らなかった高額な預金や資産の存在が明らかになったり、予想よりも債務が少なかったりすることがあります。

 

しかし、このような場合でも、一度行った相続放棄を撤回することは原則としてできません。つまり、後になって有利な相続財産が見つかったとしても、それを相続する権利はありません。相続財産の全容を把握せずに性急な判断を下すことの危険性を理解しておくことが重要です。

 

相続放棄の期限と注意点

相続放棄を検討する際、最も重要な要素の一つが時間的制約です。法律で定められた期限内に手続きを完了しなければ、相続放棄の権利を失う可能性があります。

 

3ヶ月ルールの重要性

民法では、相続放棄の期限を「相続開始を知った時から3ヶ月以内」と定めています。この3ヶ月ルールは非常に重要です。期限の起算点は、被相続人の死亡を知った日ではなく、自分が相続人であることを知った日となります。3ヶ月の期間は日数で計算され、この期間内に家庭裁判所への申述を完了しなければいけません。

 

この期限を過ぎると、原則として相続放棄はできなくなり、単純承認したものとみなされます。つまり、被相続人の全ての権利義務を無条件で承継することになります。

 

期限延長の可能性と条件

3ヶ月の期限内に相続放棄の手続きが間に合わない場合、特定の条件下で期限の延長が認められる可能性があります。例えば、相続財産の調査に時間がかかる場合や、相続人が海外に居住しているなど、特別な事情がある場合です。

 

ただし、期限延長は自動的に認められるものではありません。家庭裁判所に対して、延長を求める申立てを行い、認められる必要があります。単なる手続きの遅れや怠慢、相続人間の話し合いに時間がかかっている場合などは、期限延長が認められにくい点に注意が必要です。

 

相続放棄の代替案

相続放棄のデメリットを考慮すると、代替案として限定承認を検討する価値があります。限定承認は、相続放棄と単純承認の中間的な選択肢として位置づけられます。

 

限定承認の仕組みと特徴

限定承認とは、相続によって得た財産の限度内でのみ被相続人の債務や遺贈を弁済する方法です。相続財産が債務を上回る場合、その差額を相続できる一方、相続財産が債務より少ない場合、個人の財産は保護されます。ただし、すべての相続人の同意が必要であり、相続財産の調査と目録作成が求められます。

 

限定承認を選択すると、相続人は相続財産を清算する義務を負います。これには債権者への通知や債務の弁済などの手続きが含まれます。

 

限定承認と相続放棄の比較

限定承認は相続放棄と比較して、財産の一部相続が可能である一方、手続きがより複雑で時間と労力がかかります。また、全相続人の同意が必要という点も大きな違いです。さらに限定承認した場合には被相続人から相続人に対して相続発生時の価額で資産の譲渡があったものとみなされ譲渡所得税が課税されてしまいます。

 

期限については、両者とも原則として相続開始を知ってから3ヶ月以内に手続きを行う必要があり、また、原則として撤回はできません。限定承認は、相続財産の内容が不明確な場合や、資産と負債の差が小さい場合に有効な選択肢となる可能性があります。

 

ただし、手続きの複雑さや、全相続人の同意が必要という点及び譲渡所得税がかかる点は、大きな障壁となる可能性があります。相続放棄と限定承認のどちらを選択するかは、相続財産の状況、他の相続人との関係、手続きにかけられる時間と労力などを総合的に考慮して判断する必要があります。

 

相続放棄前に行うべき重要なステップ

相続放棄は重大な決断であり、その影響は長期にわたります。この章では、相続放棄前に行うべき重要なステップについて解説します。

 

1.被相続人の財産状況の徹底的な調査

相続放棄を検討する際、まず行うべきは被相続人の財産状況の徹底的な調査です。この調査には預金や株式などの金融資産、不動産、動産、保険金や退職金、債務などが含まれます。

財産調査は相続すべき財産の全容を把握し、予想外の資産や債務を発見し、相続放棄の是非を判断する材料となるため重要です。調査には金融機関、信用情報取扱機関への照会や不動産登記簿の確認など、専門的な知識が必要な場合もあるため、必要に応じて専門家のサポートを受けることもおすすめです。

 

2.他の相続人と事前に相談する

相続放棄は個人で決定できますが、その影響は他の相続人にも及びます。したがって、相続権の移動に伴う影響の説明、他の相続人の意向確認、潜在的な家族間のトラブル回避、相続財産に関する情報共有のために、事前相談が重要です。

 

事前相談では、以下のような内容を話し合いましょう。

  • 相続放棄を考えている理由
  • 相続財産の状況
  • 相続放棄による他の相続人への影響
  • 代替案(限定承認など)の検討

 

特に、相続放棄によって新たに相続人となる可能性のある親族には、十分な説明と配慮が必要です。突然相続人としての責任を負わせることは、家族関係を損なう可能性があります。

これらのステップを踏むことで、相続放棄の決断をより慎重に、そして十分な情報に基づいて行うことが可能となります。

 

まとめ

相続放棄は、被相続人の債務から身を守る有効な手段ですが、同時に重大なデメリットも伴います。新たな相続人の出現による家族間のトラブル、撤回不可能性、そして全財産の相続不可能性という3つの主要なデメリットを十分に理解し、慎重に検討することが重要です。

 

また、3ヶ月という法定期限内に手続きを完了する必要があるため、迅速な対応が求められます。しかし、その一方で、十分な財産調査と他の相続人との事前相談も不可欠です。相続放棄が適している場合もあれば、避けるべき場合もあります。個々の状況を冷静に分析し、必要に応じて限定承認などの代替案も検討しましょう。

 

相続に関する決断は長期にわたって影響を及ぼす重要な選択です。迷った場合や不安がある場合は、専門家のアドバイスを受けましょう。司法書士法人しもいち事務所では、相続放棄を含む相続に関する様々な相談に対応しています。相続に関する悩みがある方は、お気軽にご相談ください。

 

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相続放棄ができない場合とは?専門家が解説する注意点と対処法

相続放棄は、被相続人の財産や債務を一切引き継がない選択肢です。しかし、特定の状況下では相続放棄が認められないケースがあります。この記事では、相続放棄ができない場合の具体例や注意点、対処法について解説します。ぜひご一読ください。

 

相続放棄の基本知識

相続放棄

相続放棄を検討する前に、その基本的な概念と手続きを理解することが重要です。ここでは、相続放棄の定義や手順、そのメリットとデメリットについて説明します。

 

相続放棄とは

相続放棄とは、相続人が被相続人の財産や債務を一切相続しない選択をすることです。相続放棄をすると法律上、最初から相続人ではなかったものとみなされます。これにより、プラスの財産もマイナスの財産(債務)も引き継ぐ必要がなくなります。

 

相続放棄の手続き

相続放棄の手続きは、相続開始を知った日から3ヶ月以内に行う必要があります。被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述し、相続放棄申述書と必要書類を提出します。手続きが完了すると、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が送られてきます。

 

相続放棄のメリットとデメリット

相続放棄のメリットは、被相続人の債務を引き継がなくて済むことと、相続に関する手続きや管理の負担がなくなることです。一方、デメリットとしては、プラスの財産も一切相続できなくなることと、一度相続放棄すると撤回はほぼ不可能という点があります。

 

相続放棄ができない主なケース

相続放棄は常に認められるわけではありません。ここでは、相続放棄ができない主な状況について詳しく説明します。

 

単純承認が成立してしまった場合

単純承認とは、被相続人の財産と債務を全て引き継ぐことです。相続財産を処分したり、使用したり、遺産分割協議書に署名・捺印したりすると、単純承認したとみなされ、相続放棄はできなくなります。例えば、被相続人の預金口座から引き出しをしたり、不動産を売却したりすると単純承認とみなされます。

 

熟慮期間を過ぎてしまった場合

熟慮期間とは、相続人が相続の承認や放棄を決めるための期間です。原則として、相続開始を知った日から3ヶ月以内に相続放棄の手続きをしなければなりません。この期間を過ぎると、原則として相続放棄はできなくなります。

 

必要書類に不備がある場合

相続放棄の申述には、相続放棄申述書、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人の戸籍謄本、被相続人の住民票除票などの書類が必要です。これらの書類に不備があると、相続放棄が受理されない可能性があります。

 

単純承認とみなされる行為

単純承認とみなされる行為を詳しく理解することで、意図せず相続放棄の機会を失うことを防げます。ここでは、具体的な例を挙げて説明します。

 

相続財産の処分や使用

相続財産を処分したり使用したりすると、単純承認したとみなされます。被相続人の預金を引き出したり、被相続人名義の不動産を売却したり、被相続人の所有物を譲渡したりする行為が該当します。ただし、葬式費用の支払いや相続財産の保存に必要な行為は例外とされることもあります。

 

遺産分割協議への参加

遺産分割協議に参加し、協議書に署名・捺印すると、相続を承認したとみなされます。これは、協議に参加すること自体が相続人としての立場を認めることになるためです。

 

債務の一部返済

被相続人の債務の一部でも返済すると、相続を承認したとみなされます。例えば、被相続人のクレジットカードの請求書を支払うなどの行為が該当します。

 

熟慮期間を過ぎても相続放棄できる可能性

原則として熟慮期間を過ぎると相続放棄はできませんが、例外的に認められるケースもあります。ここでは、そのような可能性について説明します。

 

熟慮期間の延長をした場合

相続財産の調査を行っても相続財産の所在や構成が複雑で、調査調査が間に合わないような場合、熟慮期間中に家庭裁判所に熟慮期間の伸長の申立てを行えば、熟慮期間を延長できます。延長後さらに熟慮期間の伸長の申立てをすることも可能です。

 

借金の存在を後から知った場合

相続開始時、被相続人に相続財産が全く存在しないと相当な理由によって信じて、後になって借金の存在を知った場合も、熟慮期間の起算点が遅くなる可能性があります。この場合、借金の存在を知った時点から3ヶ月以内に相続放棄の手続きをすれば、認められる可能性があります。

 

相続放棄で失敗しないためのポイント

相続放棄を確実に行うためには、いくつかの重要なポイントがあります。ここでは、相続放棄で失敗しないための注意点を解説します。

 

早期の財産調査と意思決定

相続開始を知ったら、できるだけ早く被相続人の財産状況を調査しましょう。プラスの財産とマイナスの財産(債務)を把握することで、相続放棄すべきかどうかの判断材料となります。調査方法としては、被相続人の通帳や預金証書の確認、不動産登記簿の確認、税務署での相続税の申告書の閲覧、金融機関への照会などがあります。これらの調査には時間がかかる場合もあるため、早めに着手することが重要です。

 

相続財産に手をつけない

相続放棄を検討している場合、相続財産には一切手をつけないようにしましょう。被相続人の預金を引き出したり、不動産を利用・処分したり、借金を返済したりする行為は避けるべきです。これらの行為は単純承認とみなされる可能性が高いため、慎重に行動することが大切です。

 

専門家への相談

相続放棄は複雑な法律問題を含むため、専門家への相談が有効です。司法書士や弁護士などの専門家に相談することで、相続財産の正確な把握、相続放棄の是非の判断、適切な手続きの指導などのサポートを受けられます。専門家のアドバイスを得ることで、相続放棄の失敗リスクを大幅に減らせます。

 

相続放棄が認められなかった場合の対処法

相続放棄の申述が受理されなかった場合でも、対処法があります。ここでは、そのような状況での選択肢について説明します。

 

即時抗告の手続き

相続放棄の申述が却下された場合、即時抗告という手段があります。即時抗告とは、家庭裁判所の決定に不服がある場合に、高等裁判所に再審理を求める手続きです。却下の決定を受けた日から2週間以内に、却下の決定をした家庭裁判所に抗告状を提出します。その後、高等裁判所で審理されます。即時抗告では、相続放棄が認められるべき理由を明確に示す必要があります。専門家のサポートを受けることで、成功の可能性が高まります。

 

限定承認の検討

プラス財産とマイナス財産でどちらが多いか判明しないような場合、限定承認という選択肢もあります。限定承認とは、相続財産の範囲内でのみ被相続人の債務を弁済する方法です。限定承認のメリットとして、相続財産を超える債務の返済義務がなく、プラスの財産は相続できる点があります。一方、デメリットは、手続きが複雑で時間がかかることと、相続人全員の同意が必要な点です。限定承認は相続放棄より複雑な手続きですが、財産の調査に時間がかかりそうな場合、検討する価値があります。

 

まとめ

相続放棄は、被相続人の債務を引き継ぎたくない場合の有効な選択肢です。しかし、単純承認とみなされる行為をしてしまったり、熟慮期間を過ぎてしまったりすると、相続放棄はできなくなります。相続放棄を確実に行うためには、早期の財産調査と意思決定、相続財産に手をつけないこと、専門家への相談が重要です。これらを心がけることで、相続放棄の失敗リスクを大幅に減らせます。

 

また、相続放棄が認められなかった場合でも、即時抗告という対処法があります。相続に関する問題は複雑で個別性が高いため、専門家のアドバイスを受けることが望ましいでしょう。

 

相続放棄は一度行うと撤回はできません。慎重に検討し、適切な判断をすることが重要です。相続に関する疑問や不安がある場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。

 

司法書士法人しもいち事務所では、相続放棄を含む相続に関するあらゆる相談に対応しています。経験豊富な専門家が、お客様の状況に応じた最適な解決策を提案いたします。相続でお悩みの方は、お気軽に当事務所までご相談ください。

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相続手続きの期限を過ぎるとどうなる?手続きの方法を解説

相続手続きには様々な期限が存在します。期限を過ぎてしまうと、税制上の不利益を被ったり、手続きが長期化・複雑化したりするリスクがあります。この記事では、相続手続きの主な期限と期限を過ぎた場合のデメリット、円滑な手続きのためのポイントについて解説します。ぜひ参考にしてください。

 

相続手続きの主な期限

 

相続手続きには、被相続人の死亡後に決められた期限内に行わなければならないものがいくつかあります。ここでは、主な期限について見ていきましょう。

 

死亡を知ってから7日以内にすべきこと

被相続人の死亡を知ってから7日以内に行う必要があるのが、死亡届の提出と埋火葬許可申請です。死亡届は、被相続人の死亡の事実を役所に届け出る手続きとなります。埋火葬許可申請は、遺体を埋葬または火葬するための許可を得る手続きです。これらの手続きは、葬儀を行う前に済ませておく必要があります。

 

死亡届の提出先は、被相続人の住所地の市区町村役場です。死亡届の用紙は役所で入手できます。記入事項は、以下の通りです。

 

  • 亡くなった人の氏名
  • 生年月日
  • 死亡の年月日・場所
  • 届出人の氏名・住所・続柄

 

埋火葬許可申請も、死亡届と同じく被相続人の住所地の市区町村役場に提出します。申請書には以下の内容を記載します。

 

  • 亡くなった人の氏名
  • 生年月日
  • 死亡の年月日・場所
  • 埋葬または火葬の予定日時・場所
  • 申請者の氏名・住所・続柄

 

死亡後14日以内にすべきこと

被相続人の死亡後14日以内には、以下の手続きを行います。

 

国民健康保険、後期高齢者医療制度の資格喪失届の提出 被相続人が加入していた健康保険の窓口に提出します。亡くなった人の保険証、印鑑、届出人の本人確認書類などが必
介護保険の資格喪失届の提出 被相続人が住民票を置いていた市区町村の介護保険担当窓口に提出します。亡くなった人の介護保険被保険者証、印鑑、届出人の本人確認書類などが必要
年金の受給者死亡届の提出 年金事務所または市区町村の国民年金担当窓口に提出します。亡くなった人の年金証書、死亡を証明する書類、届出人の本人確認書類、預金通帳などが必

 

  • 国民健康保険、後期高齢者医療制度の資格喪失届の提出
  • 介護保険の資格喪失届の提出
  • 年金の受給者死亡届の提出

 

これらの手続きを行わないと、被相続人が亡くなった後も保険料が請求され続けたり、年金が支払われ続けたりする可能性があります。

 

死亡を知った時から3ヶ月以内にすべきこと

被相続人の死亡を知った時から3ヶ月以内には、相続人は「単純承認」「限定承認」「相続放棄」のいずれかを選択します。

 

単純承認 被相続人の財産をすべて引き継ぐ
限定承認 相続した財産の範囲内で被相続人の債務を弁済する
相続放棄 被相続人の財産を一切相続しない

 

限定承認と相続放棄を選択する場合は、家庭裁判所に申述しなければなりません。期限内に手続きを行わないと、原則自動的に単純承認したとみなされます。

 

死亡を知った時から4ヶ月以内にすべきこと

被相続人に所得があった場合、死亡を知った時から4ヶ月以内に準確定申告を行う必要があります。準確定申告とは、1月1日から死亡した日までの所得について、相続人が被相続人に代わって行う確定申告です。

 

準確定申告が必要となるのは、被相続人が死亡した年の1月1日から死亡日までの期間に所得があった場合が対象となります。たとえば、被相続人が事業所得者であった場合や公的年金を受給していた場合です。

 

準確定申告は、被相続人の住所地を管轄する税務署に提出します。申告書には、亡くなった人の所得や控除などを記入し、原則相続人全員の署名・押印が必要です。

 

死亡を知った時から10ヶ月以内にすべきこと

被相続人の財産に基づいて相続税の申告と納税を行う必要がある場合、原則として死亡を知った時から10ヶ月以内に手続きを済ませなければなりません。相続税の申告と納税は、相続人全員の連帯納付義務となります。

 

相続税の申告が必要となるのは、被相続人の遺産総額が基礎控除額を超える場合です。基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。たとえば、被相続人の子供が2人いる場合、基礎控除額は3,000万円+600万円×2人=4,200万円となります。

 

相続税の申告と納税は、被相続人の最後の住所地を管轄する税務署で行います。申告書には、相続財産の明細や相続人の情報などを記入し、原則相続人全員の署名・押印が必要です。

 

その他の期限

上記以外にも、被相続人の死亡保険金の請求(死亡を知ってから3年以内)や遺留分侵害額請求(死亡を知ってから1年以内)など、相続に関連する手続きの期限は多岐にわたります。

 

死亡保険金の請求は、被相続人が生命保険に加入していた場合に、受取人が行う手続きです。多くの場合、保険会社に請求書を提出して必要書類を揃えることで、死亡保険金を受け取ることができます。

 

遺留分侵害額請求は、被相続人の遺言によって相続分が著しく少なくなった相続人が、最低限の取り分(遺留分)を主張するための手続きです。遺留分を侵害された相続人は、侵害額を請求することができます。

 

期限を過ぎるとどうなる?

相続手続きの期限を過ぎてしまうと、様々なデメリットが生じる可能性があります。

 

税制上の不利益

相続税の申告と納税が期限内に行われなかった場合、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課されます。無申告加算税は、本来納めるべき税額の15%〜20%が上乗せされます。延滞税は、納付すべき税額に対して年率8.9%(利用水準に応じて変動)が課されます。

 

また、期限内に遺産分割協議が整わないと、配偶者控除や小規模宅地等の特例といった税制上の優遇措置を受けられなくなる可能性もあります。配偶者控除は、一定の条件を満たす配偶者が相続した財産について、最大1億6,000万円まで相続税が非課税となる制度です。

 

小規模宅地等の特例は、一定の要件を満たす土地等について、相続税の課税価格を最大80%減額できる制度です。

 

過料の支払い

相続登記は被相続人の死亡を知った時から3年以内に行うことが義務化されています(2024年4月1日施行)。期限内に登記申請を行わなかった場合、10万円以下の過料に処される可能性があります。

 

手続きの長期化と複雑化

相続手続きを放置していると、新たな相続が発生したり(相続した人が亡くなった場合)、関係者の連絡先が変わったりと、手続きがより複雑になるリスクがあります。相続人の中に認知症の方がいたり、相続人同士の仲が悪かったりすると、手続きがさらに難航する可能性があります。

 

また、相続手続きを長期化させてしまうと、預貯金口座の凍結が長引いたり、不動産の管理費用がかさんだりするなど、経済的な損失も生じかねません。

 

円滑な相続手続きのために

相続手続きを円滑に進めるためには、以下の点がポイントとなります。

 

期限管理の重要性

相続手続きの期限を正確に把握し、期限を守ることが何よりも重要です。手続きをスケジュール化し、計画的に進めていきましょう。

 

期限を管理するためには、カレンダーやスマートフォンのアプリを活用するのも一つの方法です。期限の1ヶ月前、1週間前、前日などにアラームを設定しておくと、うっかり忘れずに済みます。また、相続人同士で情報を共有し、手続きの進捗状況を確認し合うことも大切です。

 

専門家に相談することのメリット

相続手続きは複雑で専門的な知識を要する場合が多いため、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。初回相談無料の事務所もありますので、まずは気軽に相談してみましょう。

 

司法書士は、相続手続きに関する幅広い知識を持っており、相続人の立場に立って適切なアドバイスをしてくれます。司法書士に相談することで、手続きを円滑に進められるだけでなく、トラブルを未然に防ぐことができます。

 

必要書類の早期準備

戸籍謄本、除籍謄本、住民票、印鑑証明書など、相続手続きに必要な書類は早めに集めておきましょう。特に、古い戸籍や除籍を取り寄せるのに時間がかかるケースもあります。必要書類の一覧を作成し、誰がどの書類を取得するのか、役割分担を決めておくと効率的です。

 

司法書士に依頼すれば、戸籍等の取得を代行してもらうことも可能です。

 

また、被相続人の預貯金口座の通帳やキャッシュカード、不動産の登記簿謄本、遺言書などの重要書類は、早めに探しておくことをおすすめします。

 

まとめ

相続手続きには様々な期限が存在し、その期限を守ることが重要です。期限を過ぎてしまうと、税制上の不利益を被ったり、手続きが長期化・複雑化したりするリスクがあります。円滑な相続手続きのためには、期限の管理を徹底し、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。必要書類も早めに集めておきましょう。

 

もし相続手続きについてお悩みのことがあれば、ぜひ司法書士にご相談ください。私たち司法書士法人しもいち事務所では、相続手続きに関する豊富な経験と知識を活かし、皆様をサポートいたします。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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「相続」についてお悩みの方へ

当事務所のHPをご覧いただきありがとうございます。

このページでは、皆さまの相続についてのお悩みを解決すべく、詳しくご説明していきます。

 

既に相続が発生している方へ

相続が発生したら(相続の基礎知識)>>

法定相続と相続人(相続方法の決定)>>

相続手続と必要書類(不動産の名義変更)>>

遺産分割協議>>

相続放棄>>

 

今後の相続に事前に備えておきたい方へ

遺言書作成>>

生前贈与>>

成年後見について>>

 

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相続

相続放棄

「相続放棄」の言葉の意味は文字どおり、「相続権を放棄する」というものです。

つまり、親や親族から遺産を受け取らないということです。
(もっと正確に言うと「元々相続人ではなかった」扱いになるということです。)

相続放棄を正しく理解するためには、もう少し「相続」を理解する必要があります。

そもそも相続とは、配分は別として「不動産」や「現金」などのプラスの財産の他に、借金などのマイナスの財産も自動的に引き継ぐことです。

つまり、亡くなった方が生前に借金をしていた場合や、連帯保証人になっていた場合などに、金融機関から亡くなった方(被相続人)の相続人に対して、借金の返済(債務弁済)を求められるのです。自分とはまったく関係ない借金でも支払い義務が相続によって発生してしまうのです。

このとき「相続放棄」が有効な手段となります。

そして、相続放棄さえしてしまえば、サラリーローンであろうと金融機関であろうと、税務署だろうと借金の支払いに応じる必要は一切なくなるのです。

さて、この相続放棄ですが、家庭裁判所に認められないと法的効力がありませんので、申請が必要になってきます。

自筆で「相続放棄をします」と書いたり、「相続人間で相続放棄の約束」をしても、それでは相続放棄をしたことにはなりません。

 

相続放棄申請の注意点

  1. 相続放棄をするためには相続開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申請をする必要があります。
  2.  一人が相続放棄をすると、相続は借金も含め法律で定められた相続の順位に従って、どんどん巡り巡って、責任(借金返済の義務)が転嫁されます。なお、第一順位の相続人(子)が相続放棄をした後でなければ、第二順位の相続人(直系尊属)は相続放棄できません。第三順位の相続人(兄弟姉妹)も同様です。
  3. 相続する財産を選ぶことはできません。
    限定承認をする場合を除いて、「全て相続する」か「全て放棄する」ことしか選ぶことはできません。自分の家族や親戚などが多額の借金などを作っているなどの話を聞いた場合や、事業を営んでいて保証人になりやすい環境にいる場合には注意が必要ですし、調査が必要です。

疎遠な親戚のために借金を背負ってしまい、自分の大事な人生がめちゃくちゃになってしまってはかないません。

また、特に3ヶ月を経過した場合には、陳述書の書き方があいまいなことが原因で、家庭裁判所に相続放棄の申し立てが受理されないこともあります。

このような人生を変えてしまうリスクを確実に回避するためにも、相続放棄の専門家である司法書士に調査、手続きを依頼されることをお勧めします。

 

相続放棄の手続きの流れ

1)戸籍等の添付書類を収集します

2)相続放棄申述書を作成します

3)家庭裁判所へ相続放棄の申立を行います

4)家庭裁判所からの一定の照会があるので、それに回答します

5)問題がなければ、家庭裁判所で相続放棄の申述が受理されます

6)家庭裁判所から通知書が送られてきたら、手続きは完了です

7)債権者に提示するために、必要に応じて相続放棄申述受理証明書を交付してもらいましょう

 

相続放棄の必要書類(相続関係により異なります)

  • 相続放棄申述書
  • 被相続人の戸籍(除籍)謄本、住民票除票、または戸籍の附票
  • 申述人・法定代理人等の戸籍謄本
  • 収入印紙、郵便切手
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3ヶ月後の相続放棄

相続放棄の申し立ての期限については「自身が相続人であることを知った日から3ヶ月以内」に手続きをしなければならないと法律で決められています。

そして、注意しなくてはならないのは、「相続放棄に関する法律を知らなかった」という言い分は認められないという点です。

「相続放棄の手続き期限は3ヶ月以内」という期限を本当に知らなかったとしても、知っていたものとして扱われますので十分注意が必要です。

ですから、負の相続財産も含めて相続財産をすべて相続人が相続するという結果になります。

 

では、万が一期限を過ぎてしまい、相続放棄が裁判所に認められなかった場合は一体どうなるのでしょうか。

相続財産には負債も含まれますので、その負債を背負うことになります。
相続放棄が受理されずに500万円、1000万円の借金を背負ってしまったり、親が友人の連帯保証人になって亡くなったばっかりに、他人の借金で人生がめちゃくちゃになってしまう人も少なくありません。

では、どうすれば、相続放棄を裁判所に認めてもらうことが出来るのでしょうか。

特別な事情があるときは熟慮期間を「相続人が相続財産の存在を認識したとき」から3カ月と考えるとした判例があり,この判例に準ずるような場合には相続放棄が認められることがあります。
あきらめずに当事務所にご相談ください。

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相続

相続が発生したら/相続の基礎知識

相続問題は、誰もが一生に何度かぶつかる可能性のある大きな問題です。
親が亡くなり、相続が発生するというケースが最も多いでしょう。

相続を一生のうちに何度も経験している方というのは非常に少なく、相続に対する知識も乏しいのが一般的です。相続が発生した場合には、家族だけではなく、親戚などを含めた人間がその財産を得ることが出来るチャンスを迎える(そうでない場合もある)ために、財産を争う骨肉の争いに発展してしまうケースを、我々専門家は多く見てきました。

相続には、相続人(財産を受け取る人)、相続財産とその性質や評価、分割方法、税金問題、相続人間の交際、葬祭など、様々な要素が絡み合うので状況が非常に複雑になります。
そして、相続は大きな財産を扱うだけに手際よく収めるのは非常に難しく、少しの間違いでトラブルに発展してしまいかねません。

その為に、トラブルを未然に防ぐために、専門的な知識や第三者的な視点が必要となるのです。

ここでは、家族にとって大切な財産を守るために、余計な争いやトラブルを防ぐための知恵、あるいは起きてしまったトラブルを上手に解消するための解決方法をお伝えします。

 

そもそも「相続」はいつ発生するのか

そもそも相続発生するのはどの時点でしょうか。民法上の相続編の最初の条文は「相続は死亡によって開始する」とあり、共同相続人がその持分に応じて死亡と同時に相続が発生します。つまり、病死であろうと、交通事故による死亡であろうと、死亡の事実が発生すれば原則相続が開始されることになります。

その後、遺言がなければ、被相続人(亡くなった方)が残した財産を相続人間で分ける「遺産分割」をしなければなりません。この遺産分割で家族間・親族間における相続財産を分けることになるために、少しでも財産を得ようと(もしくは回避しようと)、様々なトラブルになるのです。

 

相続財産の行方

生前であれば、自分の所有している財産は自由に処分することが出来るものですが、もちろん、自らの死後、財産を処分することを自ら行うことは出来ません。自分の死後に所有財産をどのように処理するかは「遺言」を書き残すことで決定・実現させることが出来ます。(思い通りに自分の財産を相続させる「遺言」に関してはこちら  →「遺言・生前贈与」へ)

しかしながら、全ての方が遺言を生前より書き残しているわけではなく、むしろその様な方は少ないのが現状でしょう。それでは、遺言が残っていない場合の被相続人(亡くなった方)の財産はどのように処分されるのでしょうか。

それは、あらかじめ法律で定められている相続人が、定められている相続分に従って相続する法定相続を行うことが原則と民法には規定されています。そして,遺産分割協議が整えば,協議に従って相続できることとされています(→「遺産分割協議」へ)。

 

相続の対象となる財産とは?

相続の理想形は、最終的にそれぞれの相続人が被相続人(亡くなった方)の残した財産を円満に引き継ぐことです。その為には、相続財産にはどのようなものがあるのか、その評価はどの程度か(保有している土地がいくらか、など)、負債はないかなどの調査が欠かせません。

一言に「財産」といっても、現金や預貯金、株券、不動産などの積極財産(プラスの財産)だけではありません。借金や売掛金、保証債務などの消極財産(マイナスの財産)もあり、これらも相続することが原則です。
財産を特定させることも苦労が伴う作業です。財産の特定が難しい場合には、当事務所の専門家に一度ご相談下さい。

相続人が、相続が発生したことを知って、何ら法的な手続きをとらないまま3ヶ月が過ぎると、相続したものと扱われます(これを「単純承認」といいます)。
すなわち、プラスの財産もマイナスの財産も相続することになるわけです。

被相続人(亡くなった方)が生前にどの程度の財産を持っていたのかは、一緒に生活していても分からない場合もあります。分からないままに、プラスの財産・マイナスの財産の両方を単純相続することになり、被相続人(亡くなった方)が巨額の負債を抱えていた場合には、否応なく相続しなければならないのです。予め、負債の方がプラスの財産よりも多いことが分かっている場合には、相続権を放棄することも出来ます(これを「相続放棄」といいます  →「相続放棄」へ)。

また、相続財産が種々雑多で、プラス財産・マイナス財産の両方があるという場合には、プラスの限度で相続する方法もあります。これを「限定承認」といいます。

 

相続するためにはどのような手続きが必要?

相続をする際には手続きが必要といえば、驚く方もいるかもしれません。被相続人が残したプラスの財産・マイナスの財産の両方を相続する(単純相続)場合には、特に申請は必要ありませんが、不動産や預貯金(→預貯金の解約へ)などの名義変更が必要になります。(→相続手続と必要書類「不動産の名義変更」へ)※※※対応記事無し※※※
しかし、マイナス財産が大きく、相続放棄をする場合や、プラスの財産の限度でしか相続したくない場合(限定承認)には申請が必要になります。
その申請手続きに関しては、専門的な知識が必要になりますので、まずは一度当事務所にご相談下さい。

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熟慮期間の延長

相続の承認や放棄は、 相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にしなければならないと規定されています。この期間を相続放棄の熟慮期間といいます。
通常は、被相続人が死亡した時が、熟慮期間の起算点となります。

熟慮期間として3か月と定められた理由は、 相続関係の早期確定を配慮したためであり、相続人は、 この熟慮期間内に相続財産の内容を調査した上で、相続を承認するか放棄するかの選択を行うことになります。
熟慮期間内に相続人が何もしないまま3か月の期間が経過すると、 放棄や限定承認の選択権は失われてしまい、 単純承認をしたものとみなされてしまうので注意が必要です。

 

熟慮期間の伸長

熟慮期間は、 例外的に、家庭裁判所の審判によって伸長することができます。
期間の伸長は、 3か月の期間だけでは、 相続の承認や放棄の判断をするための相続財産の調査ができない場合に認められます。

被相続人と疎遠であったり、遠方であったりすると、その期間内に相続財産の状況の調査ができないことがあります。その場合、家庭裁判所に、「相続の承認・放棄の期間伸長」の申立てをすることができます。(伸長期間は家庭裁判所の裁量となります。)

なお、熟慮期間伸長の申立ては、熟慮期間内に行わなければならず、 期間経過後の申立ては許されないことに注意する必要があります。

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相続手続きに関して(名義変更手続き)

相続手続きとは、「全ての人が必ず行わなくてはならない、行政機関への届出や名義変更」
のことを指します。ここでは、相続手続きについて具体的にどんなことをすればいいのか?
をご紹介します。相続手続きに関してご不明な点がございましたら、当事務所の無料相談をご利用ください。

→不動産の名義変更手続(相続登記)
→預貯金の名義変更手続(相続登記)
→株式の名義変更手続(相続登記)

不動産の名義変更

相続が発生したら、被相続人名義の不動産登記簿を相続人名義に変える手続きをしなくてはなりません(相続登記)。

相続登記はいつまでに行なわなければいけないという期限はありません。しかし、この手続きを怠ると、不動産の売却や抵当権の設定ができません。不動産登記に関して、明確な期限が迫っていないためか、様々な誤解をされていることが非常に多いですが、名義変更をしないで後に大きなトラブルになることが良くあります。速やかに名義の変更を行いましょう。

不動産の名義変更をしないデメリット

不動産の名義変更(不動産登記)をしない場合、以下のようなデメリットがあります。
・時が経つとともに、相続人が増え、まとまる話もまとまらなくなる。
・相続人のひとりが認知症などで意思能力に問題が生じると、手続きができなくなる。
・相続財産の名義変更(遺産分割)を終えてない場合は、共有財産となるので、その不動産の売却や担保提供もできません。

不動産の名義変更をしないと、後に大きなトラブルの原因になります

上記の通り、不動産登記を怠ると、後に大きなトラブルの原因となります。ここではそんな良くあるトラブル例をご紹介します。

  • 死亡した人が遠方地に土地を保有していた場合に、遺族の方(相続人)では発見することが出来ずに、名義変更を怠った。
    このまま放置しておくと、相続する権利を保有する相続人が時間ともにどんどん増えていき、遺産分割がスムーズいかなくなってしまいます。
  • 相続登記をすると、“莫大な”相続税が発生すると思い込んでいる。相続に関する手続きをした時に、何でもかんでも相続税が発生すると思っておられる方が非常に多いのですが、相続税が発生する相続案件は相続財産が基礎控除を超える相続のみです(基礎控除額:3000万円+600×相続人の数)。相続税は課税されない場合が多いのです。ですから、安心して相続財産の名義変更をお済ませ下さい。
  • 登記済証(権利証)を紛失したため、登記ができないと思い込んでいる。
  • 不動産を所有している方は、権利証(登記済証あるいは、登記識別情報)をもっておられると思います。紛失してしまった場合、権利証は再発行されることはありませんが、相続登記は権利証が無くてもすることができます。
  • 相続人が(借金などを理由に)行方不明になってしまい、その相続人が不在のため、相続ができないと思い込み名義変更をしなかった。相続人がなんらかの理由で行方不明になってしまうこともあります。しかし、その相続人不在ではもちろん遺産分割は成立しません。ですから、このような場合に、家庭裁判所に「不在者財産管理人の申立て」を行い、行方不明になってしまった相続人の代わりに、不在者財産管理人が家庭裁判所の許可を得て、話し合いに参加し、遺産を分割することができます。
  • なんらかの理由で登記をせずに、そのまま長期間経過してしまった場合、罰則を恐れて、名義変更ができなかった。名義変更をしなかったからといって、罰則などの規定はございません。ですから、すぐに名義変更することをお勧めいたします。
  • そもそも登記が必要なことすら知らない。新しく土地を取得した場合は、所有権の移転登記が必要になりますし、建物を購入した場合などは、所有権の保存・移転登記が必要になります。自分の土地の権利を守るためにも、登記は絶対にしておくべきです。

不動産の名義変更の手続きの流れ

大まかに、以下の手順で行います。

(1)戸籍等遺産分割協議に必要な書類の収集

(2)遺産分割協議の終了

(3)登記に必要な書類の収集

(4)登記申請書の作成

(5)法務局への登記の申請

相続登記手続きの流れ

1.登記に必要な書類の収集

登記に必要な書類は、どのように遺産分割の協議が行われたかによって、用意する書類が異なってきます。

1)法定相続人が一人の場合または法定相続分で相続をする場合

      • 被相続人の出生から死亡までの連続する戸籍
      • 被相続人の登記簿上の住所とつながりがわかる住民票の除票又は戸籍の附票
      • 法定相続人の戸籍
      • 法定相続人の住民票
      • 相続する不動産の固定資産税評価証明書

2)遺産分割協議で決めた割合で相続をする場合

      • 被相続人の出生から死亡までの連続する戸籍
      • 被相続人の登記簿上の住所とつながりがわかる住民票の除票又は戸籍の附票
      • 法定相続人の戸籍
      • 法定相続人の住民票
      • 相続する不動産の固定資産税評価証明書
      • 法定相続人の印鑑証明書
      • 遺産分割協議書2.申請書の作成
        登記申請書を作成する場合の詳細は、状況によって複雑に変化します。司法書士に依頼する方が、正確かつ速やかに実行できることでしょう。3.登記の申請
        登記申請書と収集した書類をまとめ、相続する不動産を管轄する法務局に登記申請をします。提出した書類に不備がなければ1週間~10日程で登記が完了し、不動産の名義が変更されたことになります。4.登記の費用について
        登記を申請する際には税金(登録免許税)の納付が必要になります。その際必要になる税金(登録免許税)は固定資産税評価証明に記載されている不動産の価額に1000分の4を乗じた価格となります。

 

預貯金の名義変更

銀行などの金融機関には、相続があった場合の各手続書類を提出しなければ、預金を引き出すことが出来ません。これは、一部の相続人が許可なく預金を引き出したりすることを防止するためです。また、このように凍結された預貯金の払い戻しができるようにするための手続きは、遺産分割が行われる前か、行われた後かによって手続きが異なります。遺産分割協議前には相続人全員の了承のもと,一旦代表相続人の通帳に預金を移す手続きと葬儀など急な出費のため、各相続人のはんこだけで一定割合,一定額の預金を払い戻しできる制度があります。

預貯金の名義変更は、金融機関によって記入する書式が異なり、面倒な作業となるので,当事務所にご依頼くださるとことが可能です。

 

株式の名義変更

相続人が相続する財産のなかに株式がある場合には、不動産の名義変更と同じように、株券の名義変更をする必要があります。上場株式は証券取引所を介して取引が行われていますので、証券会社と相続する株式を発行した株式会社の両方で手続をすることになります。
解約して現金を引き継ぐ場合は、相続人が証券会社の通帳を持っていることが必要です。

 

 

面倒な手続きを専門家がサポートいたします

面倒な名義変更を当事務所の専門家が代わりに行なうサポートも行なっております。
「面倒な手続きを専門家に代わりにやってもらいたい」
「平日は仕事などで忙しく、手続きを行なう時間が無くて困っている」
という方は、当事務所に一度ご相談下さい。

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相続

相続方法の決定(単純承認・限定承認・相続放棄)

被相続人が亡くなった後、相続が発生します。被相続人が残したプラスの財産もマイナスの財産も全て相続することを「単純承認」といい、相続財産と債務を無条件・無制限に全て引き継ぐことになります。

相続が開始されたからといって、誰もが喜んで被相続人の財産を相続するとは限りません。

1.相続財産といっても借金の方が多い

2.相続財産をもらわなくても生活できるし、それより相続争いに巻き込まれたくない

3.長男に店を継がせる

4.次男に農家を任せなければならない

などという場合には、相続を選択せずに「相続放棄」をするケースも考えられるでしょう。相続放棄の必要手続きや流れに関してなど詳細は「相続放棄とは」をご覧下さい。(→「相続放棄」へ)

 

また、プラスの財産もあるが、マイナスの財産もあり、複雑なのでプラス財産の限度でマイナス財産の相続をする、つまり、債務のうち相続財産を超える部分の返済義務を引き継がない方法である「限定承認」をする場合もあるでしょう。この様なケースは、独自で決めてしまうのではなく、専門家に一度相談してみた方が良いでしょう。

 

3ヶ月の熟慮期間とは

相続人にとって相続を知った時から3ヶ月間のことを「熟慮期間」とし、この間に被相続人が残した相続財産をどのように処理するかを考える期間が設けられています。被相続人が亡くなった後、葬儀などが重なることで落ち着いて相続について考えることが出来るようになるのは、四十九日が終わってから、という方も多いためとされています。

被相続人が残した相続財産はプラス財産やマイナス財産がそれぞれどの程度あるのかを、財産調査を行うことで把握する必要があり、その後に財産の相続方法を「単純承認」「限定承認」「相続放棄」するか決定します。

債務が何社からいくらあるかわからないなどの事情があり、財産調査に時間がかかってしまい、3ヶ月を過ぎてしまうことも少なくありません。そういう場合には、家庭裁判所に期間伸長を求めることが出来ます。

 

3ヶ月を超えてしまったら相続放棄は申述できない?

被相続人の残した相続財産を相続放棄する場合には、「自分が相続人であることを知ったとき」から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述をします。なお、「被相続人が死亡して」からではありませんので注意が必要です。

期間の伸長を行っていた場合を除いて、3ヶ月の熟慮期間を超えた相続放棄は申述を行っても、家庭裁判所から認められることは、基本的には難しいでしょう。しかしながら、例外的に相続放棄できるケースもあります。当事務所にご相談ください。
3ヶ月の期限を超えた相続放棄も諦めず、まずは、当事務所にご相談下さい。(→「3ヶ月後の相続放棄」へ)

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相続

遺産分割協議

遺産分割とは、被相続人(亡くなった方)が生前残した財産を、各相続人が協議により、各々の相続分を決定することを言います。
相続が開始すると、被相続人(亡くなった人)の財産は相続人に相続されます。

その財産はいったん相続人の全員共有財産となりますが、そのままでは各相続人の単独所有とならないため、相続人の間で遺産分割を行うことになります。

遺産分割に関する法律には、細かい規定などはほとんどなく、各遺産と各相続人の事情を考慮して自由に出来るということです。しかし、遺産の内容も各人の事情も千差万別なので、遺産分割がこじれることになれば、相続人間で泥沼の紛争へと発展することもしばしば見られます。そのような自体は出来ることなら避けたいものです。

ここでは、上手な遺産分割協議の進め方や、トラブルにならない遺産分割の注意点などについて詳しくご説明します。

 

遺産分割協議の心構えと注意点

まず、遺産分割協議に臨む際に留意しておくべきことは「自分の主張だけでなく、各相続人の事情も考慮するべきである」ということです。各相続人には個々の事情があり、そうした事情を言い出せばきりがありません。遺産分割協議はお互いが各相続の事情を推し量り、理解し、ある程度の譲歩をする必要があるのです。

 

遺言がある場合の注意点

遺言がある場合には、遺産の相続方法は遺言通りになされるのが基本(これを「指定分割」といいます)ですが、多くの場合には、特に自筆証書遺言の場合には、相続分(割合)の指定があるだけのものであったり、相続財産の一部の取り扱いに関するものだったりといったケースが多いのも実情です。
そのような場合には、やはり遺産の承継や残余財産の承継について遺産分割協議をする必要があります。

 

不動産の遺産分割の仕方

不動産には土地と建物があります。相続が開始すると不動産を含め、遺産の全ては一旦相続人全員の共有となります。これを遺産分割前の共有といいます。
それ以降は、特別な事情以外は遺産分割協議をもって、その不動産を承継した人が登記を行うことが一般的です。もちろん、不動産を共有する場合には共有登記も可能です。

多くの場合、遺産の中で大きな割合を占めるのは不動産です。したがって、不動産の評価額は非常に大きな問題なのです。
通常、相続税については税理士が算定する場合が多いですが、中には、相続税申告の経験が少ない税理士もいて、不動産の評価が税理士により上下することもあるのです。相続財産に不動産が多く含まれていたり、高額な不動産が含まれたりする場合には、相続税に精通した税理士などの専門家に相談されることをお勧めいたします。

もちろん、当事務所では、相続税申告に精通した税理士との連携関係をとっており、皆さまの相続税に関するご相談にも対応できるような体制をとっておりますので、安心してご相談下さい。

 

預金の遺産分割の仕方

銀行などの金融機関には、相続があった場合の各手続書類を提出しなければ、預金を引き出すことが出来ません。これは、一部の相続人が許可なく預金を引き出したりすることを防止するためです。また、このように凍結された預貯金の払い戻しができるようにするための手続きは、遺産分割が行われる前か、行われた後かによって手続きが異なります。
各提出書類や手続きに関しては「相続手続きについて」をご覧下さい。(→「相続手続きについて」の(預貯金の名義)へ)

 

生命保険金の相続の仕方

被相続人の死亡によって取得した生命保険で、その保険料を被相続人自身が負担していた場合、生命保険金は被相続人が亡くなった時点で所有していた財産ではありませんので、相続財産ではありませんが、相続税が課税されます(みなし相続財産)。例えば、父親が自分自身を被保険者とした生命保険に加入し、保険金の受取人を子どもとした場合,生命保険金に対して相続税が課税されます(この場合生命保険の非課税枠を適用できます。)。
これに対して,生命保険の保険料を保険受取人が負担していた場合は所得税が課税されます。くわしくは当事務所の提携の税理士に相談してください。

 

遺産分割協議書の作成

遺産分割の話し合いがつけば遺産分割協議書を作成するのが一般的ですが、この証書を作成しないからといって、その分割協議自体が無効になるということではありません。
しかし、遺産分割協議書を作成していなければ、相続により不動産を取得した人は名義変更を登記することは出来ません。また、被相続人の預貯金を払戻す場合にも、遺産分割協議書が必要になる場合も多いようです。

この「遺産分割協議書」には通常相続人全員の実印を押印し、印鑑証明書を添付します。「遺産分割協議書」がなければ、基本的には相続による不動産などの所有権の移転登記をすることができません。

遺産分割協議には定型の方式があるわけではありません。したがって、相続人の誰が何を相続したかが明確に記載され、各相続人の署名・押印・作成日があればよいでしょう。

 

遺産分割協議書を作成する際には専門家にご相談下さい

≪専門家が遺産分割協議への同席し、トラブルを未然に防ぎます≫
専門家が同席しない場合、法律の間違った解釈により、遺産分割協議を公平に行えない場合があります。専門知識を補充するという観点から、専門家の同席をおすすめします。

≪トラブルにならない遺産分割協議書を作成いたします≫
遺産分割協議後、相続人間でトラブルが生じないように、遺産分割協議書を作成します。
相続税の申告において「配偶者の税額軽減」を受けるときや、遺産分割協議書を登記原因を証する書面として不動産の相続登記を行う場合には、「遺産分割協議書」が必要になります。

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相続

相続登記義務化

 

 

 

最近,相続登記義務化についての答申が発表されました。

それによると,被相続人が亡くなってから3年以内に相続登記を行わないと
相続人に過料が課せられることになります

不要な土地については国に費用を払って処分してもらうことも可能になりました。

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