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成年後見・財産管理

成年後見について

成年後見制度は知的障害、精神障害、認知症などにより判断能力が十分でない方が、不利益を被らないように家庭裁判所に申し立てをして、その方を援助してくれる人を付けてもらう制度です。

例えば、一人暮らしの老人が悪質な訪問販売員に騙されて高額な商品を買わされてしまうなどといったことを最近よく耳にしますが、こういった場合も成年後見制度を上手に利用することによって被害を防ぐことができる場合があります。

後見人の役割

財産管理
■ 預貯金による入出金のチェックと必要な費用の支払い
■ 所有不動産の管理
■ 後見費用捻出のための不動産などの売却
■ 管理の必要上、必要であれば訴訟行為を行うこと
■ 確定申告や納税

身上監護
■ 治療、入院に関し病院と契約すること
■ 健康診断などの受診手続き
■ 住居の確保(賃貸借契約)をする
■ 施設などの入退所に関する手続き
■ 施設や病院の処遇を監視し、本人に不利益がある場合は、改善要求する
■ 要介護認定の手続きや介護サービス事業者と介護サービス契約をする
■ 介護サービスが契約どおりか確認し、異なる点がある場合は、改善要求する
■ 教育・リハビリに関する契約をする
■ 訪問などにより本人の状況に変更がないか「見守り」をする

家庭裁判所への報告
■ 1年に一度の収支報告
■ 財産を処分したり、財産管理の方針を大きく変更するとき(遺産分割・相続放棄)
■ 本人の入院先・氏名・住所・本籍、又は成年後見人の住所・氏名が変わったとき
■ 療養看護の方針を大きく変えるとき
■ 本人死亡時の成年後見終了登記申請
■ 財産目録の作成
■ 財産の引き渡し
■ 終了報告

成年後見制度の種類

成年後見制度とは、判断能力が不十分なために、財産侵害を受けたり、人間としての尊厳が損なわれたりすることがないように、法律面や生活面で支援する身近な仕組みです。

成年後見制度には、(1)任意後見制度(2)法定後見制度があります。

(1)任意後見制度
将来、自分の判断能力が衰えたときにそなえて、契約する能力のあるうちにあらかじめ支援者(任意後見人)を選んでおきます。将来の財産や身のまわりのことなどについて、「こうしてほしい」と、具体的な自分の希望を支援者に頼んでおくことができます。「任意」という意味は、「自分で決める」ということです。

万一のときに、「誰に」、「どんなことを頼むか」を「自分自身で決める」仕組みなのです。

(2)法定後見制度
すでに判断能力が衰えている方のために、家庭裁判所が適切な支援者を選ぶ制度です。
選ばれた支援者は、本人の希望を尊重しながら、財産管理や身のまわりのお手伝いをします。

本人の判断能力の程度に応じて、次の3つのタイプに分けられます。

■ 補助/判断能力が不十分である
■ 保佐/判断能力が著しく不十分である
■ 後見/ほとんど判断することができない

申し立てに必要な書類と費用

成年後見制度を利用するには本人の住所地の家庭裁判所に申し立てをする必要があります。申し立ての必要な書類と費用はおよそ以下のとおりですが、事案によって多少異なります。

■ 申立書
■ 申立人の戸籍謄本1通(本人以外が申し立てるとき)
■ 本人の戸籍謄本、住民票、登記されていないことの証明書、診断書各1通
■ 成年後見人候補者の住民票 1通(候補者がいる場合)

また、費用としては以下のものがかかってきます。

1)収入印紙
2)切手
3)登記費用
4)鑑定費用

 

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任意後見制度

任意後見制度とは、本人が契約の締結に必要な判断能力を有している間に、将来自己の判断能力が不十分になったときの後見事務の内容と、後見する「任意後見人」を、公正証書で決めておく制度です。

なお、任意後見制度での家庭裁判所の関与は、本人があらかじめ選任しておいた任意後見人を、家庭裁判所が選任した任意後見監督人を通じて監督するにとどまります。
この際、任意後見監督人は本人が選んだ任意後見人がきちんと仕事をしているかチェックします。
なお、任意後見契約においては任意後見人を誰にするか、どこまでの後見事務を委任するかは話し合いで自由に決めることができます。上記の内容を公証人役場で公正証書を作成する必要があります。

任意後見メリットとデメリット

メリット
○ 本人が成年後見人,報酬等を決めることができること
○ 契約内容が登記されるので任意後見人の地位が公的に証明されること
○ 家庭裁判所で任意後見監督人が選出されるので、任意後見人の仕事ぶりをチェックできること

などの良いところがあります。

 

デメリット
× 公正証書作成に費用がかかる。
× 任意後見監督人についても費用がかかる。
× 法定後見制度のような取消権がない

良い点悪い点をしっかりとおさえて、任意後見をするかしないかの判断をすることをお勧めします。

 

後見人はどのように選べばよいか

法定後見の場合、後見人は家庭裁判所が選任します。

しかし、後見開始審判の申し立て書には、後見人の候補者を記載する欄があり、ここに候補を記載しておけば考慮してもらえます。

ただし、家庭裁判所の家事調査官が調査して、流動資産の額,相続関係,住所等から不相当であるとの判断がされると、候補が記載されていても別途選任されます。候補が記載されていないときは、家庭裁判所が司法書士などから適任者を探して、選任します。

また、後見開始の審判申し立て書に書く候補者を誰にするべきかについては、人によって考えが異なります。過去の例では、子供や兄弟、配偶者等の親族がなることが多いようです。

理想的なのは、

■ お金に関して絶対の信頼をおける方
■ 面倒見の良い方
■ 近所で生活している方
■ 本人より若い方

でしょう。

最近は、身上監護は親族、財産管理は司法書士が担当するという「共同後見」が増えてきつつあります。財産管理が中心になる場合は、第三者が客観的な立場で管理した方が望ましい場合も多いのでしょう。また、相続人が複数存在する場合も、共同後見として、話し合いで後見事務を行うのがよい場合もあります。任意後見の場合は法定後見の場合と異なり、自分で自由に後見人の候補者(任意後見受任者)を選任することができます。

 

ただし、以下の人は欠格事由に該当しますので、後見人にはなれません。

1)未成年者
2)家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人、補助人
3)破産者
4)行方の知れない者
5)本人に対して訴訟をした者、その配偶者及び直系血族
6)不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者

身上監護が中心であれば、親族や社会福祉士等の方がきめの細かい後見ができるかも知れませんが、財産管理が中心であれば司法書士の方が適切な管理ができるかもしれません。

申立前によく相談してください。

 

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死後事務委任契約

死後事務委任契約とは、ご自身がお亡くなりになった後、葬儀や埋葬に関する事務を委託する契約のことで、委任者(依頼をする人)が受任者(任される人)に対し、自分の葬儀や埋葬に関する事務についての代理権を与え、死後の事務を委託する委任契約のことです。

遺言で葬儀や法要のやり方を指定する方もいらっしゃいますが、法的強制力はありません。遺言者の希望ということで、遺産の分配等に関する条項に続く付帯事項としてなされることになります。葬儀のやり方を具体的に指定したり、散骨等を埋葬の方式として指定したりする場合には、実際に葬送を行うことになる人々との話し合いや準備をしておくことが重要です。

この死後事務委任契約は、老後の身上監護と財産管理を万全なものとしたうえで、死後の相続、相続財産の管理、または処分および祭祀の承継に紛争を生じないようにするために有効だと言われています。確実に行われるようにするために、遺言で祭祀の主宰者を指定しておく、遺言執行者を指定して、その遺言執行者との死後事務委任契約を締結する方法も考えられます。

契約内容の注意点

費用の負担について明確にしておく必要があります。任意後見人・成年後見人等は、ご本人が死亡した時点でその職務が終了しますし、見守り契約のみの場合では、死後の事務を行うための財産的裏付けがなく、葬儀費用等の支払いを行うことができなくなります。

遺言で祭祀の主宰者に、「遺言者の葬儀費用に充てるために、金○○円を預託してあり、それを使用して下さい」と指定することも可能です。

亡くなった後の事務手続き
■ 委任者の生前に発生した債務の弁済
■ 委任者の死後の葬儀、埋葬もしくは永代供養に関する債務の弁済
■ 賃借建物の明け渡し、敷金もしくは入居一時金等の受領
■ 親族関係者への連絡
■ 家財道具や生活用品の処分に関する事務

それぞれを必要に応じて行うことも可能です。「任意後見契約」「見守り契約」「死後事務委任契約」「公正証書遺言」など検討している場合には、まずは当事務所にご相談下さい。